クラシック

【インタビュー】砂川涼子(ソプラノ) アヴェ・マリア ~聖夜と月~ 砂川涼子 ソプラノ・リサイタル

【インタビュー】砂川涼子 ©Yoshinobu Fukaya

砂川涼子

©Yoshinobu Fukaya

日本を代表するソプラノ歌手、砂川 涼子(すなかわ・りょうこ)。表現豊かで、心に響く歌唱とその可憐な舞台姿ゆえに、多くの人を惹きつけてきた。その砂川が、2021年12月18日(土) 、ザ・シンフォニーホールで、「アヴェ・マリア ~聖夜と月~ 砂川涼子 ソプラノ・リサイタル」を開催する。一年に一度のクリスマスの時期、砂川の歌声に酔いしれたい。砂川にリサイタルへの想いを訊いた。


――今回のリサイタルのタイトルは、「アヴェ・マリア ~聖夜と月~ 砂川涼子 ソプラノ・リサイタル」。プログラムには月をテーマにした曲が並んでいますね。昔から、月が多くの芸術家にインスピレーションを与えてきたということを改めて感じさせます。

イタリア歌曲の幾つかは、これまでに勉強してきた曲なのですが、月をテーマにしようと決めてから色々と広がっていきました。フォーレの曲には初めてトライしますし、ルサルカも最近歌いはじめた曲です。こんなに沢山の素敵な曲があることを嬉しく思っています。


――早速ですが、それぞれの曲の聴きどころを教えてください。はじめは、ベッリーニとマスカーニというイタリア歌曲から始まります。

イタリア人作曲家の曲には、やっぱりイタリア人らしさがあります。内容はもちろん素敵なのですが、音の運びも、言葉を通り超えた何かを伝えてくれるような美しさがあります。音楽の美しさが訴えかけてくる作品なので、涙したりすることもありますね。


――その後に続くフォーレの「月の光」と「夜明け」はいかがですか。

フォーレの作品は本当に大好きなので、是非歌いたいなとずっと思ってきました。イタリアの作品の後に、フランスのフォーレを聞いていただくと、同じ月をテーマにした曲であっても、こんなにお国柄で違うんだなあというのが一目瞭然。曲のもつ素晴らしさそのものを、シンプルに、美しく届けられるといいなと思っています。


――フォーレの作品は、今回初めて披露されるということでしたね。

学生の頃から、ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティといったイタリア語の作品を多く歌ってきました。ラテン語の仲間ということでイタリア語とフランス語は近く、感じることも多い。最近は、オペラでもフランスものの役を歌うことが増えてきました。「ウェルテル」のソフィーとか、「カルメン」のミカエラ、「ホフマン物語」のアントニアとか。そのため、フランス語の作品にもトライしやすかったですね。


――後半はオペラの作品が続きますね。プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」から“私の名はミミ”を歌われますね。

「ラ・ボエーム」の舞台は、クリスマス。リサイタルのテーマに一番合っている作品かなと思います。一番多くリクエストを頂く役ですし、是非プログラムにいれたいと真っ先に思いついた作品です。続く「竹取物語」と「ルサルカ」のアリアは、これまで舞台で歌う機会がありませんでした。挑戦です。


――沼尻竜典さんが台本・作曲を手がけたオペラ「竹取物語」の"姫のアリア"とはどういう作品なのでしょうか。

「竹取物語」は、耳馴染みの良いメロディが多く、面白い役もたくさん出てくる、笑いあり涙ありの素敵な作品。日本人にとって親しめる題材ですし、日本語で歌うために、お客様にダイレクトに届くので楽しみにして頂けたらなあと思っています。リサイタルでお届けする曲は、かぐや姫が月に帰る前の別れのシーンで歌うアリアです。実は、「竹取物語」は、来年の1月にびわ湖ホールで公演があり、2日目の公演にかぐや姫の役で出演することが決まりました。そちらでも全曲を聴いて頂けると嬉しいですね。


――そして、ドヴォルザークのオペラ「ルサルカ」から"月に寄せる歌"が続きます。こちらも、初挑戦ということですね。

これまで、ルサルカはドラマティックな役だと思っていたので、私の声には少しちょっと重いかなと感じていました。しかし、このアリアは私の大好きなルチア・ポップのようなリリックなソプラノの方も本当に素敵に歌われています。きっと私の声にも合うと思って勉強を始めたら、割と自分の声にぴったりで、是非、お客様の前でも歌ってみたいと思い、選びました。


――それ以外には、ハーラインの「星に願いを」を歌われます。ピノキオの主題歌で、素敵なメロディーラインが印象的な曲ですね。

この曲には、「悲しい気持ちをしているのは、あなただけじゃないからみんな一緒よ」という想いが込められています。星を見上げて祈れば必ず叶うというメッセージです。素敵な曲ですし、大変な生活を送らなきゃいけない今の時代にあっても、ちょっとした希望から幸せを感じて頂けるのではないかと思って選びました。


――伴奏を務めるのは、昨年に続いてベテランの河原忠之さんです。河原さんとはこれまでにも何度となくご一緒されてきましたが、いかがですか。

これまでも共演させていただく機会がたくさんあり、絶大の信頼を寄せています。繊細な音で寄り添って下さいます。去年のコンサートでは、アレンジされた作品を何曲かお願いしましたが、そのなかにジャズ風の編曲でピアノ・ソロの部分がありました。それを弾いている時の河原さんが、もう本当に楽しそうで可愛らしかった!ピアノ・ソロの間、ずっと河原さんの弾いている姿を見て、幸せを噛みしめていたんです。そういうのを自然に出してくれるピアニストなので、その日のちょっとした調子の変化をわざわざ口で言わなくても感じて下さり、とても有難いですね。今回も楽しく2人で、素敵な音楽をお届けできれば嬉しいです。


©Yoshinobu Fukaya

――今後、歌ってみたい曲や挑戦してみたい役柄を教えてください。

ご縁があって日本語のオペラに興味をもっています。今年8月、神奈川フィル主催の公演で、初めて「静と義経」というオペラを歌わせて頂きました。無観客公演になってしまったのですが、静御前の役です。日本語のオペラは2013年に新国立劇場で「夜叉ヶ池」を歌ったきりでしたが、静御前を歌ったら声に合っていると感じました。日本語の発音はすごく難しく、それを声に乗せていくのは本当に大変な作業でしたが、すごく勉強になりました。イタリアオペラなどのヨーロッパのオペラに通じるところも沢山あって、やっぱり良いものには共通する部分があることを感じました。お客様にはとても喜んでいただけましたし、静の表現でも共感できるところがありました。


――日本オペラに出演する予定はありますか。

つい先日発表になったばかりですが、2023年にオペラ「源氏物語」の公演で六条という生霊の役を歌います。皆を呪い殺してしまう恐ろしい役で、ドラマティックな役は大好きなのですが、大きなチャレンジになると思っています。このところ、日本オペラの新しい世界に惹きこまれている感じがしていますね。


――最後に公演を心待ちにされているお客様に向けたメッセージをお願いします。

素敵な作品を私なりにたくさん集めました。皆さんを近く感じながら、楽しい時間を共有し、好きなひとときを重ねることができると良いなと思っています。是非、足を運んでいただけると嬉しいです。




インタビュー・文/大野 はな恵


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