神奈川フィルハーモニー管弦楽団首席ソロ・コンサートマスターとしての活動のほか、石田組、DOS DEL FIDDLESなど、さまざまな形で演奏活動を続けている石田泰尚。彼のソロ・リサイタル「石田泰尚ヴァイオリン・レジェンド」が7月11日に大阪シンフォニーホールにて開催される。今回のステージで、彼はどのような音を会場に響かせるのか。話を聞いた。
石田さんは、オーケストラやユニットなどさまざまな形でステージ立たれることがありますが、ソロのステージはまた違う感覚があったりしますか?
僕は基本的に、ソロでもオーケストラでもその場の雰囲気を楽しんで、それがお客さんに伝わればいいな、という感じでやっています。明日はリサイタルだからどうしよう、みたいなことは全くなくて、どの公演でも楽しみという気持ちですね。でも、こういうソロのリサイタルは、どこかが依頼してくれないとできないこと。もちろん、自主公演として自分でホールを取るようなケースもありますが、依頼していただけることに、まずは感謝ですね。それは、僕の演奏を聴きたいと思ってくれるお客さんがいっぱいいるということなんで、そこは本当に感謝しています。そういう期待に応えたいという気持ちももちろんあります。
今回は大阪でのコンサートになりますが、大阪のお客さんの印象は?
大阪のお客さん、僕はけっこう好きなんですよ。ノリがいいっていうか。東京のお客さんも盛り上がることはもちろんあるんだけど、大阪はちょっと違うんですよね。そういうお客さんに引っ張られるときもありますし、だから関西方面に行くのはいつも楽しみです。シンフォニーホールでやるのは2回目。前回は、厳しい状況下ではあったから、お客さんに来ていただけたことが本当に嬉しくてね。前回のプログラムとは、まったく違ったものを演奏するつもりです。
どんなプログラムになりそうですか?
結構、聴きやすい曲というか。もし、その曲を知らなくてもすんなり入れそうな曲を選んでます。前回は、アストル・ピアソラが生誕100周年の年になったばかりだったので、ステージ後半はオール・ピアソラにしたんです。ピアソラは、クラシックでもなく、タンゴでもなく、いわば別のジャンルだったんですけど、今回は、オール・クラシックのプログラムにしたくてね。そういう気分だったので、そうしました。
ソロのステージで演奏されるとき、どういうお気持ちでいるんでうすか?
そうですね……俺の音ってこうなんだよ、どう?っていう感じかな。気に入ってくれたら、また聞きに来て、っていう気持ちで弾いています。ソロの時は、最初から最後までそういう気持ちでいますね。そこはオーケストラとは違うかも。ひとりだから、めっちゃ遊びますし、気持ち的にはソロのリサイタルが一番、ラク。全部、自分の責任なんでね。オーケストラになると、自分以外のこともあるからね。
ソロのステージが、もしかしたら一番石田さんがリラックスしている演奏かも知れないですね。石田さんが今、感じているヴァイオリンの楽しさはどういうものですか?
リサイタルではやっていないんだけど、石田組(石田の呼びかけによる弦楽合奏団)だと、ロックとか本当にいろんなジャンルの音楽をやるんだよ。どんなジャンルでもヴァイオリンで演奏できるんだぜ、っていうのが楽しいところかな。どこまで出来ているかは分かりませんけど、そういう感じですね。若いころから、やってみたいと思ったことは本当に幅広くやってみたいというのが当時の目標で、今それがなんとなく出来ている感覚なんです。それで満足しているワケじゃないんですけど、これ以上忙しくなると、もう死んじゃうくらい忙しくなるんで(笑)。ただ、今やっていることの知名度をどんどん上げていって、全国のいろんなところで演奏して、その土地のたくさんの方に聞いていただきたい。それが今後の目標になると思います。沖縄とか四国とか、あまり行ったところのない場所とかね。佐渡島とかも!
離島での演奏とかも素敵かもしれないですね。若い頃と今とで、自分の中で変化したものはありますか?
そうですね……基本的に、あんまり変わっていないかも。でも、あんまり怒らなくなったかな。何かね、昔は結構イライラしていたんですよ。声を荒げたことも、何回もありました。でも、疲れちゃったんですよ(笑)。怒るのってエネルギー使うじゃないですか。もう充分疲れているので、これ以上疲れたくなくてね。伝え方のアプローチが変わったっていうのもあるかな。丸くなったのかなぁ。
怒るよりも、それ以上に夢中になれることがたくさんあるからかもしれないですね。
そうかもね。怒ってる暇ない!みたいな(笑)
忙しい中で、一番リラックスしているのはどういう時?
家に居るのが一番リラックスできるね。本当にテレビが大好きで。ダウンタウンさんが好きなんです。もう僕の中では別格。忙しいので、とりあえず毎週録画していて、それを観て爆笑するのが、一番のリラックスです。もうさすがに暑くなっちゃいましたけど、こたつも好きなんです。僕も父親もね。10月くらいから5月くらいまで、こたつを出してて、今年も5月のギリギリまで出してました(笑)。こたつ、最高なんで。父と2人でこたつに入ってます。動けなくなりますね。こたつに入ってめっちゃ寝るのが、幸せです。
最後に、楽しみにしていらっしゃる方に聴きどころを教えてください!
前半に3曲くらいブラームスを弾くんです。1曲目に「雨の歌」をやるんですが、もう、美しく弾きます。1曲目からとにかく、お客さんを自分のワールドに引き込んでしまおうと思っていますね。そこまで激しくない曲なので、聴かせどころは難しいんですけどね。後半はちょっと派手な曲が多いので、そのメリハリも楽しんでください。
【演奏プログラム(予定)】
●ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調作品78「雨の歌」
●ブラームス/F.A.Eソナタ第3楽章「スケルツォ」
●ブラームス/ハンガリー舞曲第6番
●スメタナ/わが故郷より
第1曲モデラート
第2曲アンダンティーノ
「ボヘミアの幻想」
●グリーグ/ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調作品45
インタビュー・文/宮崎新之
石田泰尚ヴァイオリン・レジェンド