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【インタビュー】[7STARS in 王子ホール]SiriuS(ヴォーカル・デュオ)’S Wonderful Concert
SiriuS(ヴォーカル・デュオ)
レコード会社の日本コロムビアが、クラシック音楽フェスの新シリーズ「7STARS(セブン・スターズ)in 王子ホール」を開催する。若手新人を紹介するこのシリーズで、6月13日にステージに立つのは大田翔、田中俊太郎からなるボーカル・デュオSiriuSだ。クラシックの枠を飛び越え、ミュージカル、ジャズ、歌謡曲など、彩り豊かなナンバーを歌い上げる彼らに、歌にかける想いなどたっぷりと話を聞いた。
SiriuSというユニットはどのような経緯で結成されたんですか?
田中 僕たちは2人とも東京藝術大学で声楽を学んでいて、翔ちゃんはテノールで、僕はバリトンという2人のユニットになります。SiriuSを結成する以前は、1回か2回くらい共演したことがあったくらいで、すごく面識があったわけではないんです。彼は大学卒業後、ミュージカルなどいろいろな舞台で活躍していましたし、僕は長く大学に残って研究をしていました。そんな僕らに日本コロムビアのプロデューサーの方から声をかけていただいて、ユニットを結成することになりました。
大田 大学の先輩なので知っている方ではあったんですが、共演したいと思っても僕から声をかけられるような存在ではなかったんですね。同級生だと、自分たちでコンサートを企画して共演するということもあったんですけど。先輩となるとそうはいきませんから、ユニットを組めることになって、面白いことになりそうだな、と思いました。自分の中にはユニットを組むという発想はありませんでしたから。
田中 でも僕が先輩とはいえ、翔ちゃんの方が先に現場で活躍していたので、僕としては学生の身分で彼の活躍を見ていた立場。そういう活動の仕方もあるんだ、と感じていたんです。ユニットとして一緒に活動していくことになって、僕もそんな可能性のある場所に飛び込んでいくんだな、と思いました。
ユニット結成前のお互いの印象ってどういうものだったんですか
大田 学生の間は1対1で話したことはなかったんじゃないかな。
田中 同じ声楽科でも、翔ちゃんはオペラ科で、僕は独唱科だったので、学んでいることも微妙に違っていたんです。それでも、学内の発表会で見かけたりすることがあったくらいで“オペラを歌っていた大田くん”くらいの印象でしたね。
大田 発表会でも、先輩の演奏を聴く後輩としては、ほぼお客さんの気持ちなんです。単純にスゴイ!と思って聞いていましたし、博士課程にまで進んでいる方なので、同じ大学内とはいえさらに特別な印象はありましたね。年齢がすごく離れているわけではないんですけど、スゴイ人!というイメージで、尊敬していました。
ユニットを組んで、今はお互いのこともよく理解されていると思います。どんな人柄なのか、自己紹介ではなく、“この人はこんな人!”と、相手のことを紹介してください。
田中 翔ちゃんは、背も高くて容姿もいい。テノールはオペラの中では主役やヒーロー、王子様という役どころになることが多いので、まさにぴったり。舞台上では、むちゃくちゃカッコいいんです。
大田 舞台上“では”(笑)
田中 (笑)。ですけど、いろんな才能を持っていて、インスタグラムではいろいろなイラストをアップしていたり、地味ハロウィン(通常のハロウィンではしない、日常にいるような人の仮装するハロウィン企画)での仮装がめちゃくちゃバズったりもしているんですよ。イラストもユーモアがあってちょっとクスっとくる。そういう舞台を降りた翔ちゃんの姿もぜひ見て欲しいというのが、僕の想いです。
大田 素敵に紹介してくれてありがとうございます(笑)。大学時代のまだあんまりお話したことがないころは、すごく真面目な先輩という印象だったんです。ほかの人から聞いた話でも、いろいろな研究をカッチリとやってくる勉強家だ、という評判だったんですね。だからめちゃくちゃ堅いのかな、どうやって仲良くなろうか、と思っていたんですけど……やっと最近になって、“人間なんだな”って分かってきました(笑)。以前、目玉を頭に乗せるような、ちょっと変わった衣装が用意されていた時、別に着なくていい時も着て遊んでいたりするんです。
田中 全然関係ない時に着て遊んでたのにリハーサルでは忘れる、っていうね(笑)
大田 そう。意外とカワイイな、と(笑)。あと楽屋で冗談を言ってくれたり、すごく優しいんですよ。俊太郎さんと呼んでいたのを、俊ちゃんに改めまして、より距離が近くなったように思います。今までは、演奏家としての会話が多かったんですが、何気ない会話も増えてきて、それも楽しくなってきました。99%は完璧なんですけど、1%かわいくて面白いところがあるので、みなさんにも早くそこに気付いてほしいです。
お2人はソロとしてそれぞれに活動もされていますが、SiriuSならではの音ってどういうものだと感じていますか。
田中 SiriuSとしての音は、2人の声が合わさった時の化学反応がどういうものかというのを含めて、これからどんどん作っていくものだと思っています。ソロで歌う時は、ずっと旋律を歌いますし、ほかの人や楽器のことよりもとにかく自分の声だけに集中しています。でもSiriuSの時は、2人のハーモニーがどうなっていくかというところに一番注目していますね。楽曲はオリジナルバージョンに編曲していただいているんですが、旋律を歌ったり、ハーモニーパートを歌ったり、あるいはユニゾンで歌ったりします。そのバランスや作り方って、すごく奥行きのあることなんじゃないかと思いますね。長く一緒にやっていけるデュオなので、今後どうなっていくのかというところも楽しみに活動しています。
大田 ほとんど俊ちゃんが言ってくれました(笑)。2人になると選択肢が2乗になるイメージなんですよね。仮に10通りの声があるとして、1人だったら10通りしかないけど、2人なら10×10で100通りの組み合わせが生まれる。可能性が一気に広がるんです。よく作戦会議をするんですけど、その可能性の広がりを感じる瞬間がすごく楽しい時間ですね。ソロの時は、音楽を作るときにもああしたい、こうしたいって頭で考えるだけで言葉にすることもあまりないんです。でも2人で一緒にやるから、それを言語化するんです。相手が言ってくれることももちろんですけど、言語化することにより自分自身で考えていたことにも新しい発見があったりして、それも今まで感じたことの無いイメージでしたね。
昨年12月23日にセカンドアルバム「星めぐりの歌」もリリースされています。こちらはどのような仕上がりになりましたか。
大田 僕らはSiriuSという星にちなんだユニット名なので、選曲の段階で星にちなんだ曲で僕たちに合いそうなものを選んで歌おうというところからアルバム制作が始まりました。自分たちでもアイデアを出しつつ、SNSでファンの方からアンケートを取ったりしながらセレクトして、収録しています。ファーストアルバムは、日本語の曲もありましたが、ミュージカル曲などを原語で歌ったものでした。今回は日本語の曲もたくさん入っていて、星をテーマにしつつ、たくさんの人に僕たちの歌が届くようにというのもコンセプトのひとつ。なので、日本の歌謡曲やミュージカルの古典的な楽曲など、幅をもったレパートリーになっています。僕はオペラを歌ってきたので、基本的にはイタリア語で歌うことが多く日本語で歌ったことがあまりなかったんです。もちろん日本語が母国語ではあるので、感情は一番入ってくるんですけど、それを音にするときに逆に苦労してしまうんです。もっとセリフっぽい方がいいのか、歌い上げるようにしたほうがいいのか、感情が乗りやすい分、いろいろと考えてしまうんですね。そこが難しい部分ではありました。
田中 僕は大学時代に日本語の歌曲の勉強もしてきましたが、クラシックの場合だと作曲家が書いた楽譜を読み解いて、いかに表現していくかという流れになるんですね。今回のアルバムには、歌謡曲などみなさんにも聴き馴染みのある曲がたくさん入っていて、それを編曲したうえで、どう歌い継いでいくのか、という部分もあると思ったんです。そういう曲が、ファンのみなさんやこれからSiriuSを聞いてくださる方に、どう届いていくのかというのはすごく考えました。より届きやすい歌い方、ハーモニーの作り方というのは、クラシックのときとはまた違うアプローチがあるように、身に染みて感じましたね。
アルバムはオリジナル曲「Grace -愛はここに」も収録されています。こちらはどのような楽曲でしょうか
大田 作詞を吉元由美さん、作曲を森田花央里さんに作っていただきました。まず最初に、僕らの歌声を聴いてくださった吉元さんが、浮かんできたイメージで詞を書いてくださったんです。その後に、森田さんがラフなメロディーを書いてくださって、それを♪あああ~で歌ったものをまた、吉本さんが聴いてくださって、詞を改めてつけてくださいました。それを何往復かして、出来上がった曲です。僕は今まで出来上がっている曲をいただいて歌うだけで、基本的にクラシックはそういうものだと思うんですけど、曲が出来上がる過程に立ち会ったのが初めての体験でした。こちらからも、こうしてみたいです、と伝えたりして、1%くらいかもしれないですけど、曲作りに参加できたので新鮮でした。
田中 曲が出来上がるところに立ち会いつつ、自分も参加しつつ、というのはすごくワクワクしました。断片的だったものが、どんどん形になっていくのは面白かったですね。吉本さんもSiriuSというユニット名を意識していただいたと思いますし、森田さんも宇宙規模の広大なスケール感を根幹に持ってきて創作していただいたように思います。ぜひ、星空を見ながら聴いていただけると嬉しいですね。僕は実家が島根なんですが、自然の中で聴くとすごく心地よかったので、大きなものに包まれるような感覚の時に聴いていただきたいですね。
歌う時に意識されていることはありますか。
大田 宇宙の広がりのようなダイナミックな曲なので、そういう広がりを感じつつ歌っています。でも、いまだに悩んでいるところもあって、そういう広さを感じすぎると寂しさも感じてしまうんですね。広すぎて。僕としてはこの曲を、聴いた人が元気になれるようなあたたかい曲にしたいと思っているので、あんまり宇宙に目を向けすぎないように、とも思っています。
田中 確かに楽曲的な広がりと裏腹に、歌詞には「そっと愛する ただそれだけ」という言葉があったり、ミクロな世界のメッセージもある。そこにある、あたたかみのある肌感覚は大事だね。
大田 どれくらい自分に近い人たちを感じられるか、一番いい距離感を見つけたいと思っています。
田中 歌い手としては、すごく難しい曲だと感じていますね。これからコンサートで歌っていく中で、1回1回の本番の中で育っていく曲じゃないかな。自分自身の声としても、アンサンブルとしても、楽曲としても、少しずつ新しいものを発見していければと思います。
6月には、「7STARS(セブン・スターズ)in 王子ホール」というフェス企画の中で、’S Wonderful Concertを開催されますね。
大田 僕らの曲を好きになっていただいて、僕たちSiriuSのことも好きになっていただけるようなコンサートにしたいですね。王子ホールはとても音響がいい劇場なので、僕らの声の魅力も最大限にお届けできるのではないかと思っています。演出などは変わるかもしれませんが、基本的には僕らの生の声を楽しんでいただけるような曲がほとんどになると思いますので、より魅力が伝わればいいですね。精一杯、気持ちよく帰っていただけるようなコンサートにしたいと思いますので、楽しみにいらしてください。
田中 今、このコロナ禍という状況で大きなコンサートを開催することが難しい部分もある中で、王子ホールという素晴らしいホールで発信していける機会なので、まずは来ていただいたみなさんに元気になって帰っていただけるようなステージになればと思います。そして、自分たちの演奏家としての活動の勢いも、より良いものにしたい。YouTubeチャンネル名も「すわんだふる」なんですが、そちらは僕らがトークするチャンネルなので、ステージMCの中でもそういうトークをちょっと楽しんでいただけるような、よりお客さんと近づけるようなコンサートにしていきたいと思います。生の舞台だからこそ感じられる、エネルギッシュな部分を出していきたいと思いますので、ぜひ一緒に楽しんでください。
今後、チャレンジしたいことや歌ってみたい楽曲やジャンルはありますか
田中 YouTubeでは、僕たちの歌を一部でも聴いていただける機会ができるといいな、と思っていて、身近な曲や季節の曲、みなさんがSiriuSに歌ってほしい曲などをキャッチボールしながら、やっていけるといいな。そして、僕たちの仲の良さもアピールしたいです(笑)。歌ってみたい楽曲は、英語のポピュラーソングですね。結構、洋楽が好きできくんですけど、古くはエルヴィス・プレスリーとか、最近映画にもなったクイーンですとか……そういうたくさんあるポピュラーソングの中で、僕たちの声に会うものを歌っていけたらいいですね。
大田 僕は演歌ですね。演歌というジャンルも楽器としての声の素晴らしさがすごく出るものだと思っているんです。それは、僕らが普段やっているクラシックとは全然違うように見えて、結構共通しているところがあるんじゃないかな。演歌歌手の方、特に細川たかしさんのようなパワーや技術には憧れがあるので、いつか挑戦したいですね。あと、チャレンジとしてはオリジナルのオペラを作品として作りたい。今までも同じ作品に出たことはあるんですけど、役として向き合うというのもすごく面白いんです。それをオリジナル作品で出来たら素敵だな、と思うので、いつか叶えたい夢です。
今後のご活躍を期待しています! 本日はありがとうございました
インタビュー・文/宮崎新之
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