クラシック
【インタビュー】オリタノボッタ&綿引さやか&飯島則充/“ブラバン・ディズニー!” コンサート 2019
【インタビュー】オリタノボッタ&綿引さやか&飯島則充
“ディズニーが贈る吹奏楽の祭典! ”と銘打った『“ブラバン・ディズニー!”コンサート』が、3月2日の山形を皮切りに全国ツアーをスタートさせた。昨年の大好評を受けての再演は、さらに大きくスケールアップして戻ってきたという。そんな今回の見どころを、指揮者のオリタノボッタさん、MCの綿引さやかさん、本コンサートのプロデューサーである飯島則充さんにじっくりと聞いた。
まずそもそも、なぜディズニーと吹奏楽の掛け合わせなのだろうか。企画立案者でもある飯島さんに、誕生の経緯を尋ねてみると……?
飯島:実は僕自身、学生時代に吹奏楽をやっていたんです。中学や高校の吹奏楽部では、ディズニーの音楽ってもう必ずと言っていいくらい演奏するものなんですね。中でも、誰もが知る超有名どころを集めた「ディズニー・メドレー」は人気が高い。もちろん僕も演奏しました。どの曲もいいアレンジだから演奏していてもすごく楽しいし、演奏することで楽曲との距離がより縮まる。『今度はこんなふうに演奏してみよう』といった意欲も出てきて、思い入れがどんどん深くなっていきました。堅苦しいコンクールなどではなく、定期演奏会や文化祭で演奏することが多いと思うのですが、そんなリラックスした環境で演奏したせいもあってか、とてもいい思い出として今も記憶にしっかりと残っています。僕と同じような経験をしたブラバン出身者には、社会に出てからも数多く出会います。そんな人たちとは一気に親しくなれるんですが、話してみると「もう演奏はやめちゃったし、音楽自体から遠のいちゃったなあ」といった声が圧倒的。そんな彼らを音楽の世界に呼び戻すには、吹奏楽とディズニーの融合しかないと考えたんです。ディズニーの音楽を吹奏楽でもう一度聞いてもらえれば、ポジティブな化学反応がきっと生まれるだろう、そう思ったんです」
こうして、世界中で愛され口ずさまれるディズニーの名曲たちに、 吹奏楽が新たな生命を吹き込むコンサートが実現したというわけ!実際、昨年の観客の中には元ブラバン出身の社会人の姿も多く、「また楽器を始めてみたくなった」といったうれしい感想がたくさん寄せられたそう。
さらに、現役ブラバンの中学、高校、大学生や、吹奏楽の経験はないけれどディズニー大好きといった幅広い層のお客さんが会場に詰めかけ、「ディズニーと吹奏楽ってこんなに合うんだ、こんなに楽しいんだ」という思いを共有したのだとか。
演奏を担当するのは、テレビ朝日「題名のない音楽会」などのメディア出演も多い、国内屈指のプロ吹奏楽団として定評のあるシエナ・ウインド・オーケストラ。そして同オーケスラを率いるのは、米米CLUBのホーンセクションのメンバーであり、サクソフォン、フルート奏者として活躍するオリタノボッタ。昨年からの続投となる。近年は指揮者や舞台の音楽監督のほか、市民吹奏楽団や中学、高校の吹奏楽部などアマチュア吹奏楽愛好家の指導や共演も積極的に行っている。そんなオリタさんに「このコンサートの指揮者はあなたしかいません!」と飯島さんが熱烈ラブコールを送ったことで、指揮を務めることになったという。
オリタ:僕もブラバン出身ですが、ディズニーも吹奏楽も大好き!身近で間口が広い吹奏楽とディズニーは唯一無二の最強タッグと言えると思います。映像や照明、音響などで凝った演出をあえてせず、音楽一本で勝負するのも潔い(笑)。だけど『お行儀よく聞いてね』的な、かしこまった雰囲気は微塵もなく、『遊びにおいで。一緒に楽しもう!』という、メチャクチャ敷居の低いライブイベントです。親子三世代で来てもらっても、誰も飽きることがない(笑)。普段音楽を生で聞くことがない人でも絶対楽しんでもらえるはず。音楽の裾野を広げていく可能性を持ったコンサートだと自負しています」
今年初の新しい試みもある。
飯島:心にしみる歌詞が多いディズニー音楽で、歌つきで演奏しない手はないという話になり、今年は歌唱力もあるMCを探しました。綿引さんは歌唱力があるだけでなく、 ディズニープリンセスのような品と美しさもあって理想的な人」
「いいえ、そんな……」と恐縮しつつも、今回の抜てきがうれしくてたまらない様子の綿引さん。出演の意気込みは?
綿引:胎教からディズニー音楽で育った私は、ディズニーの音楽は空気みたいな存在。大げさに聞こえるかもしれませんが、生活の一部、というよりもう私の一部かな(笑)。 昨年はアメリカ、ロサンゼルスのハリウッド・ボウルという野外にある大きなステージで『美女と野獣』のコンサートに出演させていただいたのですが、外国語でもディズニー音楽ならすぐ一体になれるんだと身を持って実感しました。世代や性別、国籍などを超えて誰とでも一緒に口ずさめ、「何だかいいよね」と共感し合える力が、ディズニー音楽には宿っているのだと思います。今回私はMCを務めながら歌も歌わせていただくのですが、Today’s Specialというコーナーでは、長く愛されるナンバー、または新作ナンバーのどちらか1曲を会場のお客さんに当日選んでいただくことになっているんです。セットリストが最後の最後までわからないなんて、ワクワクしますね。 吹奏楽との共演は初なので緊張しつつも、楽しみで仕方がないです!」
今回のツアーでは2つのプログラムが用意されている(会場ごとにAかBかプログラムを固定)そうだが、どちらも「コンサートに来場してくれたお客さんが、ニコニコ笑顔で帰路に着いてもらえるような内容にしようと、みんなで考えました」(オリタさん)とのこと。
そして、どちらのプログラムもラストを飾るのは、観客も一緒に舞台に上がって行う「ディズニー ツムツム」のテーマ(『LINE:ディズニー ツムツム』のゲームBGMとしておなじみ)の演奏だ。当日好きな楽器を持参すれば、プロのミュージシャンと“共演”ができるのだ(事前登録などは一切不要。譜面は、コンサートのホームページから無料ダウンロードが可能)。
昨年は、クラリネットやサックス、トローンボーン、フルートといった吹奏楽器だけでなく、カスタネットやハーモニカ、バイオリン、リコーダーなど持ち込まれた楽器の種類が、多岐にわたったそう。
オリタ:コントラバスやスチールパン(ドラム缶でできた打楽器)といった大きな楽器を持参した人までいて、一体会場までどうやって来たんだろう?と、余計なことまで考えちゃいましたね(笑)。あ、でも、会場では大きな楽器はラストまで預かってもらえスペースがあるので大丈夫ですよ。ステージに乗り切らないほどの観客が参加した回もあって、毎回大盛り上がりになるんです。 客席に残った方も歌ったり手拍子、指笛をくれたりして、みんな演奏者であると同時に観客でもある……。そんなものすごく心地良い瞬間が共有できました。ぶっちゃけ下手、上手いは一切関係ありません。わかるところだけ弾けばOKなので、練習が不十分でも心配無用です」
「ステージに立つことができるなんてすごく夢があってすてき。舞台から見える景色は客席からとはまた違った感動がありますから。特に小さなお子様たちには、将来のキャリアのきっかけになる、なんてこともあるんじゃないかしら」(綿引)、「来年は47都道府県で開催したい。将来的には海外にも出てきたい。まずはアジア、そのあとアメリカですね。吹奏楽とディズニーに言葉の壁や国境はないから」(飯島)……。ここまで夢と抱負がとめどなく、ほとばしるように出てくる取材もなかなか珍しい。作り手、出演者の熱量は、きっとステージでも全開になることだろう。
双方向で参加型のコンサートは、今後人気が高まっていきそうな予感。2月27日にリリースされたばかりのCD『ブラバン・ディズニー! ~シエナ・スタイル』(シエナ・ウインド・オーケストラ)を事前購入し“予習”してから見るもよし。見て気に入ったら購入し“復習”するもよし。いずれにしても、押し入れに眠った楽器だけは絶対に見つけ出して、コンサートに持参することをオススメしたい。
インタビュー・文/山本航
Photo/篠塚ようこ
プロフィール
オリタノボッタ
サクソフォン、フルート奏者。 近年は指揮者、音楽監督、役者などマルチに活躍中。
綿引さやか
ミュージカルを中心に活躍する俳優。「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役ほか、海外でも活躍の場を広げている。
飯島則充
Disneyを「お気に入り登録」して最新情報を手に入れよう!
☆お気に入り登録