国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話
東京都江戸東京博物館で開催中
デモティックの銘文のあるパレメチュシグのミイラ・マスク
「デモティック」とは古代エジプトで使われた民衆文字のこと
東京都江戸東京博物館で「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」が開催中です。
何世代にも渡って人々を魅了してきた古代エジプト。ロンドンの大英博物館やパリのルーヴル美術館などと並ぶ世界有数の総合博物館であり、優れたエジプト・コレクションで知られるベルリン国立博物館群エジプト博物館から約130点が出展されています。
▼東京展の入場チケットはこちらから。9/19(日)より東京富士美術館にて開催
タレメチュエンバステトの『死者の書』(部分)※日本初公開
古代エジプト神話によると、世界の始まりは混沌とした原初の海「ヌン」であり、その海から、すべてのものが生まれ、育まれたとされています。また、世界の終りがやってくると、すべてのものは再び原初の海へ飲み込まれていくと伝えられています。
本展では全3章に渡り、古代エジプトにおいて、世界がどのように生まれたと考えられていたか、日本では単なる“王様”という印象を持たれていることが多いファラオが担った最重要の役割とは何だったのか、そして、古代エジプトの人々は死後どのようになると信じていたのかなどを紹介しています。
また会場内では、一部を除き写真撮影が自由に行えます。公式ホームページにあるハッシュタグをつけて共有してみてはいかがでしょうか。(※一部撮影禁止エリアあり)
第1章 天地創造と神々の世界
腹ばいになる山犬の姿をしたアヌビス神像
本展のプロローグとして入口を入ると、腹ばいになる山犬(ジャッカル)の姿をしたアヌビス神像がお出迎え。墓地や死者の守護神であると共に、ミイラ作りの神であるアヌビス神は、冥界までの付き添いも行います。また、本展覧会キャラクターもアヌビス神がモチーフ。エジプト神話の世界をオリジナルアニメーション映像とともに案内しています。
ホルス神に授乳するイシス女神の小像(左)
背面にジェド柱を持つオシリス神の小像(右)※日本初公開
プロローグを抜けていくと第1章へと入ります。こちらでは天地創造と神々の世界が紹介されています。
古代エジプトは多神教世界であり、八百万の神々が存在していました。そのため、さまざまな天地創造が描かれ、いくつかの神話が知られています。
創世神話の中で特に大きな影響力を持っていたのが、ヘリオポリスとヘルモポリスの2つの宗教中心地でした。ヘリオポリスでは太陽信仰が行われており、創世神話では、創造神でありながら太陽神でもあるアトゥム神が原初の海「ヌン」の中から自力で出現し、天地を創造したと伝えられています。また、アトゥム神と彼が生み出した8柱の神々で構成される「ヘリオポリス9柱神」が重要な役割を果たしていたとも。後にこの太陽信仰が二等辺三角形で美しい四角錐の形をした巨大ピラミッドの建造要因となっていきます。
ナイルの神の像(上半部)※日本初公開
後ろはライオンの頭を持つセクメト女神座像
バステト女神座像 ※日本初公開
癒しの女神として人気があった
ほかにも古代エジプトでは、身近な自然環境の中に存在するさまざまなものに神性が宿ると信じられていました。人間の力をはるかに凌駕する力を持つ存在はしばしば「神」とみなされ、そのため空を飛ぶ能力を持つ鳥や、人間たちを襲うワニやライオンほか、サソリやスカラベといった昆虫や猫などを模した神像が数多く残されています。
神々の意思により暗闇が支配する混沌とした原初の海「ヌン」から秩序ある世界が創造されたといいます。古代エジプト人は、この秩序のことを「マアト」と呼んでいました。次の第2章では、秩序「マアト」と古代エジプト王ファラオの関連性について迫ります。
第2章 ファラオと宇宙の秩序
ハトシェプスト女王のスフィンクス像(胸像)
第2章では、世界の秩序「マアト」と人間社会のリーダーであるファラオの役割について展示されています。
宇宙全体を支配する秩序・摂理である「マアト」は絶対であり、個々の人間が遵守すべき最も重要な規範・道徳として考えられていました。
礼拝するヒヒの姿をしたトト神とアメンヘテプ3世 ※日本初公開
ヒヒは知恵の神トトを象徴し、王は神の保護を確信する者として表されている
国王であるファラオは人間社会の中で「マアト」を遵守し、遂行する最高責任者として存在しました。そのため、異民族の侵入や「マアト」を揺るがすような事柄に対し、神の代行者としてファラオは「マアト」を実践していかねばなりませんでした。もし、ファラオが「マアト」を遵守せず、遂行もしなければ大きな罰が下るとさえも考えられていたようです。
3匹の魚とロータスを描いた浅鉢 ※日本初公開
前1450~前1400年頃のもので、生命を与えるナイル川を象徴する魚とロータスの花で飾られている
また、展示品の美しさにもご注目。紀元前に作られた品とは思えないくらいの色鮮やかな考古品を見られるまたとない機会です。その美しさを間近で見れば魅了されてしまうほど。さらに、本展覧会では約130点出品の内100点以上が日本初公開となる品々なのでご鑑賞ください。
第3章 死後の審判
タイレトカプという名の女性の人型棺・外棺 ※日本初公開
第3章では、古代エジプト人の死生観について紹介しています。古代エジプトでは死後、アヌビス神によって死後の審判が行われる広間へ導かれます。そこで42柱それぞれの神様の前で、生前に罪を犯さなかったことを誓い、天秤で心臓と「マアト」を象徴する羽根が計量されます。天秤が釣り合えば、冥界の支配者であるオリシス神のもとで再生と復活が保証されます。その後、数多くの試練を克服し、楽園「イアル野」を目指します。
パピルスの茂みを船で航行する死者ヘテペトのレリーフ ※日本初公開
古代エジプト人は来世においても現世と同じナイル川流域で、生前と変わらぬ生活が送れることを切望していました。そのため死後の楽園「イアル野」にはナイル川が流れ、ナツメヤシが生い茂るエジプトそのものの光景が広がっていると考えられていました。
心臓の上には再生・復活ができるようスカラベや心臓の形をした護符が置かれる
一方で現世では、死が訪れると約70日間におよぶ埋葬のための準備期間に入ります。ここで遺体はミイラにされます。
心臓の上には再生・復活ができるようスカラベの形をした護符を置き、そのほか包帯の間や包帯を巻き終わった体の上などにさまざまな護符を置きます。
また、埋葬の中には死後に必要な知識を呪文と挿絵により示した冥界の指南書である「死者の書」も副葬されます。多種多様な護符の品々はぜひ会場にて。
ミュージアムショップ
本展の音声ガイドは東大クイズ王・伊沢拓司さん率いるQuizKnockと、荒牧慶彦さんの2バージョンが用意されています。こちらもお聞き逃しなく。
「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」は東京都江戸東京博物館にて2021/4/4(日)まで開催。東京展を皮切りに京都、静岡へと巡ります。
▼東京展の入場チケットはこちらから。9/19(日)より東京富士美術館にて開催
開催概要
国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話
開催期間
開催中~2021/4/4(日)
時間
9:30~17:30(入館は閉館の30分前まで)
休館日
毎週月曜日(ただし2021/1/4、11、18は開館)
12/21(月)~2021/1/1(金・祝)、1/12(火)
会場
江戸東京博物館
▼東京展の入場チケットはこちらから。9/19(日)より東京富士美術館にて開催
(文・写真:工藤明日香/ローソンチケット)
※すべて出展品はドイツ・ベルリン国立博物館群エジプト博物館所蔵
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