【インタビュー】植田真梨恵
“宝物のような時間”を共有するライブに
メジャーデビュー5周年を終え、改めて「アーティスト植田真梨恵」とはなにか? という核心と向き合った、最新アルバム『ハートブレイカー』。そのリリースツアーが半年以上の延期期間を経て、ついに実現する。
「かなり焦りも不安もあって。世の中的にもまわりを見ても自分自身も塞いだ気持ちになることが増えて、アルバムはできたけれどなかなか次のステップに進めないまま、配信のライブをメインにやらなくちゃいけないことがすごく難しくて。自分の中で、ライブができないということが思いのほかしんどかったんだなということに、なかなかお客さんと会えなくなってから初めて気づきましたね」
アルバムツアーを行えないことが、他の企画ライブにも心情的に影響したという。それでも、モニター越しにファンと触れ合えるライブをいくつも行ってきた彼女。2019年に配信した、25時間で作詞作曲、編曲からミュージックビデオの完成までを配信する怒涛の企画を2020年9月、自らの30歳の誕生日に再び開催し、「いいこのバースデーソング」という新曲が完成。実験的な楽曲も多いアルバムとは趣向を変え、ピアノが愛らしい優しい曲に。また、恒例となっている西村広文のピアノとの真剣勝負「LAZWARD PIANO」や、往年の洋楽カバーを主体とした「新春 祝いのCOVER NIGHT」などを生配信。メドレーに近いボリュームで歌う洋楽カバーは、彼女の音楽哲学が生きている。
「往年の曲をカバーすることで、私もそれを継承して次世代に残していければいいなと思ってやっています。それに、あの日ライブができたから今、自分を保てているのかなとも思うんですよね。ライブができないこういった期間がなければ、当たり前のようになっていたライブというものに対して、こんなにときめくようになると思っていなかったので。正直、1月5日のライブに関しては画面越しでも嬉しかったという気持ちはありました」
活動を制限されるコロナ禍の中における気づきは、実際の行動や心構えにも影響があったという。
「歌をつくって届けていく仕事をしていてよかったと、改めて思いました。今、自分が一番やりたいことを最優先にやっていないと、自分も一ヶ月後、どうなっているかはわからないので、やりたいことをかたっぱしから、できるギリギリのラインまでやりたいなと思っていて。私に関わっていただいている方々にも、人生の中でなし得たいことを、できる限り最優先でやってほしいと思っています」
ツアーの柱となる新作『ハートブレイカー』は、初めて外部の作家に今の彼女をイメージした世界観を、作曲、アレンジごとに依頼した楽曲が約半分を占める。それにより、ジャンル感を超えた多彩な楽曲が結集した。中には、歌も演奏もかなりの高難度なものも存在する。
「ライブを想定していない曲がたくさん入っているので、それをどんな風に表現していくのかが『ワクワク実験さんツアー』と銘打った(笑)、ツアーの面白味です。とくに「まぜるなきけん」、「Black Cherry In The Dirty Forest」、「Stranger」など、アルバムの中での重要部分というのは、エレクトロな感じとか、機械っぽい冷たさのよさではなくて、その音が醸し出す温かさだと思うんですよ。むしろ、アナログ感をシンセサイザー的な音から感じるようなところがこのアルバムのよさかなと思うので、そこはライブでしっかり表現したいなと思います」
アーティスト活動15年のタイミングで制作した『ハートブレイカー』には、17歳のインディーズ・デビュー以降に吸収、関係してきたことがすべて盛り込まれている。となると、今回のライブの選曲にも必然性が生まれてくる。
「『ハートブレイカー』というアルバム自体が、私が20歳の頃に出した『センチメンタルなリズム』の10年後の作品だと自分では思っているので、実際に今でも生きていてくれる『センチメンタルなリズム』の中の曲とか、大事な曲たちを4月の6公演でうまくやれるといいなと思っています」
観客と対面する、文字通り“生”のライブが当たり前ではなくなっている今。
「当然のようにやるでもないし、来るでもない。いつか行きたいけど今回は行けないかもという方もいらっしゃる中、配信もやりますので、見てくださる方はどちらかをチョイスしていただければと思います。どちらを選んでも正しいと思いますので。ライブは特別になっていますし、楽しみですし、ライブができたら宝物の時間にしたいなと思いながら、歌を日々歌っていこうと思います」
プロフィール
ウエダ マリエ
’14年に「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビュー。 あふれる感情ごと全身全霊で歌う感情型シンガーソングライター。
公演情報
植田真梨恵 LIVE TOUR 2021[HEARTBREAKER]
4/3(土)17:30 大阪・BIGCAT
4/17(土)14:30 福岡DRUM Be-1
4/17(土)18:00 福岡DRUM Be-1
4/24(土)17:30 名古屋クラブクアトロ
4/25(日)14:30 東京・EX THEATER ROPPONGI
4/25(日)18:00 東京・EX THEATER ROPPONGI
※公演が中止・延期になる可能性がございますので詳細は各公演の公式HPをご確認ください。
インタビュー・文/石角友香
構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載