【インタビュー】坂本真綾
2023/3/15(水)
窮屈な場所からどんどん自由になれるようなライブを届けたい
声優、俳優、歌手、作詞家、文筆家、ラジオパーソナリティなど、幅広いフィールドで才能を発揮している坂本真綾。2022年春に第一子を出産したことを公表し、しばらく表立った活動を控えていた彼女は、昨年11月に東京国際フォーラム ホールで約1年8か月ぶりのコンサート「坂本真綾 LIVE 2022“un_mute”」を開催。本格的な音楽活動を再開させた。オーディエンスとの久々の対面は、歌うことへのモチベーションにもつながったという。
「お客様がとてもあたたかくて、待っていたよ、という優しい空気がすごく伝わってきました。改めて私の歌を楽しみにしていてくれる人がこんなにいるんだということを心からありがたく感じましたし、この方たちに丁寧に音楽を届けることでこれからも恩返ししていきたいなと思いました」
そして今年1月には、シングル「まだ遠くにいる / un_mute」をリリース。彼女が声優として出演しているTVアニメ『火狩りの王』エンディングテーマ「まだ遠くにいる」は、繊細なピアノからはじまり、壮大なストーリー性を描き出すアッパーチューン。〈生きているんだ 生きてゆくんだ 命がきらきら光ってる〉という切実なフレーズも心に残る。
「原作の小説を読み、全体のテーマや共感できる部分を探しながら歌詞を書きました。“これまで人間が犯してきた間違いのツケを次の世代の人たちが払う”という世界が描かれているのですが、それはずっと続いてきたことでもあって。もらった命を燃やしながら、少しでも明るいほうに手を伸ばすことの繰り返しで、何とか持ちこたえてきた歴史なんだろうなと。11月のライブで初披露したのですが、とても緊張しましたね(笑)」
「un_mute」は、TVアニメ『REVENGER』エンディングテーマ。シックな手触りのメロディと〈見たこともない海へと / 運命への舵を切ろう〉というラインが響き合い、豊かな音楽世界を生み出している。
「“止まることのない世の中でも、どうか心を閉ざさないで”といったテーマなんですが、自分ではたどりつけない表現だし、人に書いてもらうこともやっぱり必要だなと。歌詞を提供してもらうと、歌えば歌うほど発見があるし、あとから胸に迫るフレーズに気づいたりするんですよ」
そして6月には全国ツアー「坂本真綾 LIVETOUR 2023」の開催も決定。彼女のライブツアーは、2020年以来、約3年ぶりとなる。
「久しぶりのツアーでとても楽しみです。前回の国際フォーラムは全体的にしっとりとした楽曲が多めのシックな内容で、コアな曲も多かったんですけど、このツアーではまたそれとはちょっと違ったカラーをお見せできたらと思っています」
現在、新作の準備に取り掛かっているという坂本真綾。妊娠・出産という人生の大きな出来事、そして、社会的な変化もまた、彼女の音楽に様々な影響を与えているはず。この3年間のなかで得たもの、感じたものが新たな表現につながる――そう、6月の全国ツアーで我々は、坂本真綾のネクスト・フェーズを実感することになるだろう。
「今の時代、何かと窮屈さを感じるような場面が多いなと私自身も感じているんですが、生の音楽を浴びてもらうことで、その場に来てくれた皆さんの心がどんどん自由になっていくような、そんなライブになればいいなと思っています。私もそういう気持ちで歌いたいです」
プロフィール
サカモト マアヤ
1996年にシングル「約束はいらない」でデビュー。声優、俳優、歌手、作詞家などで活躍を続け、2021年にはCDデビュー25周年を迎えた。
公演情報
坂本真綾 LIVE TOUR 2023
- 6/4(日)18:00 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
- 6/17(土)18:00 大阪・フェニーチェ堺
- 6/18(日)16:00 大阪・フェニーチェ堺
- 6/24(土)18:00 東京ガーデンシアター
- 6/25(日)16:00 東京ガーデンシアター
インタビュー・文/森朋之
構成/月刊ローチケ編集部3月15日号より転載