【インタビュー】坂本真綾

2022/9/15(木)

坂本真綾

シンプルに音を味わえる空間になればいい

2021年に25周年を迎え、デュエットアルバム『Duets』のリリース、横浜アリーナで記念公演を開催。今年の春には出産を経験するなど、公私ともに充実した時期を送ってきた坂本真綾。彼女自身も、自らの大きな変化を実感しているという。

「(出産によって)今まで生きてきた中で最も大きな生活の変化、価値観の変化がありました。子供が産まれてから見る世界は、今まで目にしてきたものをまったく新しい視点で捉えているような感じ。新鮮だし勉強になるし、すごく面白い。出産前は、子育てってすごくハードに違いないし、産後鬱とか気をつけないとって身構えていたんですけど、始まってみたらただただ楽しくて。それが創作活動にどういうふうに影響してくるかはまだわかりません。この変化のおかげで新たに開通した思考回路みたいなものがあると思うので、それを良いかたちで活用できたらいいなとは思います」

今年5月には、岸田繁(くるり)の作曲、編曲による「菫」(TVアニメ「であいもん」OPテーマ)、彼女自身が作詞・作曲を担当した「言葉にできない」(TVアニメ「本好きの下剋上」第3期EDテーマ)を収めた両A面シングルを発表。また、冨田ラボの「DEEPER feat.早見沙織」、堂島孝平の「Latest Train」の歌詞を手がけるなど、作詞家としても確実に表現の幅を広げている。

「私に作詞家としての仕事をくれるアーティストさんがいる、しかも冨田さんも堂島さんも私がとても尊敬する人なので、本当に励みになっています。私が書いた歌詞を私以外のシンガーが歌って表現してくれるのは、ひとりだけで完結していた景色がグッと広がる感覚があって嬉しいです」

そして11月26、27日には東京国際フォーラム ホールAでワンマンライブ「坂本真綾 LIVE 2022“un_mute”」が決定。25周年の活動、休養を経て、音楽活動のリスタートとなるが、彼女自身はあくまでも自然体でこの公演を捉えている。

「あまり意気込みみたいなものを掲げずに、肩に力を入れず自然にその場に存在できたら最高だなと思ってます。会場に来てくださる方がじっくり全身で音楽に浸ってもらえるような、シンプルに音を味わえる空間になればいいなと」

四半世紀に渡って、素晴らしい作家陣とともに豊かな響きをたたえた音楽を生み出してきた坂本真綾。この先の活動に対しては、どんなビジョンがあるのだろうか?

「『ビジョンはありません』って答えるのは非常に勇気がいることですけど……26年活動してきて、いつも目の前のことに必死なだけで先々のビジョンを明確に描くタイプではありませんでした。それが自分には合っていたんだと思います」

また「現在目の前にあるのは、家族との時間を大事にしながら、私の声を必要としてくれる人のために誠実に仕事をしたいという気持ちです」という言葉も。コロナ禍以降、まったく予期しなかった出来事が次々と起こる現在において、誠実さ、美しさ、凛とした強さを感じさせる彼女の歌は、多くの音楽ファンにとって、心の平穏、豊かさにつながる入り口なのだと思う。

「大きな時代のうねりみたいなものを感じる日々の中で、音楽にどれほどの力があるのかと考えてしまったりもします。でもこんな時だからこそ届く歌というものも、ある気がします。11月のライブでも生きている音楽を浴びてもらって、帰り道にふと気持ちがすっきりとするような、そんな余韻をお持ち帰りいただきたいと思います」

 

プロフィール

サカモト マアヤ

’96年にシングル「約束はいらない」でデビュー。歌手、声優、作詞家、ラジオパーソナリティなど多方面で活躍を続ける。

公演情報

坂本真綾 LIVE 2022 “un_mute”

  • 11/26(土)18:00東京国際フォーラム ホールA
  • 11/27(日)16:00東京国際フォーラム ホールA

インタビュー・文/森朋之
構成/月刊ローチケ編集部 9月15日号より転載

お気に入り登録して最新情報を手に入れよう!

坂本真綾

国内アーティスト