【インタビュー】名無し之太郎

2026/4/15(水)

名無し之太郎

矛盾を鳴らす、
函館発ギターレス4人組の正体

正しさや一貫性ばかりが要求される世の中に、軽やかなカウンターを食らわせてくれるバンドが登場した。それが北海道出身のギターレス4人組・名無し之太郎だ。ありふれた名前に匿名性を着せたそのバンド名は、「ビリなのに大学合格」「食べるダイエット法」といった惹句にヒントを得たものだという。

「人には必ず裏と表があるし、正義があれば悪があるのが世の中だと思う。そのすべてを否定することなく自らの思いを伝えたい」とボーカルの林は語る。

相反するものを並べた時に生まれる矛盾は、彼らの活動全体を貫くテーマだ。作編曲を担うのは、ジャズやフュージョンにルーツを持つ二瓶。「メロディラインは古風な音階なのにバックでやってることが現代的だったりだとか、混ざらないはずだったものを組み合わせる作業が楽しいし心地良い」という。その楽曲は詰め込まれた発想の多さに反してキャッチーで、技巧的なのにサラリとした聴後感が残る。

結成されたのは同じ高校の軽音楽部だった。4歳から童謡コンクールへの出場を重ねてきた林、中学時代に同級生と制作した初めてのオリジナル曲が「学内バズり」したという二瓶、「可愛い先輩がいるから」と体験入部を決めた中野、ピアノ講師だった母親に育てられた高橋。大会出場を目的に集められた個性的にして腕利きのメンバーは、林曰く「ミニ・アベンジャーズ」だったそうだ。結成当初はギタリストが在籍していたが、部室にていつも同じ顔ぶれで暇を潰す4人は欠員を補充することなく、自然にギターレス編成となった。プレイスタイルもいわゆるギターロックバンドとは異なる。

中野「ベースといえば本来ならば縁の下の力持ちというイメージ。だけど私は、曲を口ずさむ時に自然になぞってしまうようなフレーズを心がけています。メンバーから『ちょっと抑えて』って言われるくらい(笑)」

高橋「ギターがない分、ボーカルの代わりに主役となる役割と、コードで楽曲全体を支える役割の両方をやらないといけない。曲を守りつつ、出るところは出るというバランスを大事にしています」

在学中に見事全国大会への出場を果たすと、2024年2月にメジャーデビュー。以降は、ドラマ『ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』EDテーマ「毒矢」、アニメ『カミエラビ GOD.app シーズン2』OPテーマ「風化」など、タイアップ楽曲の力もあって順調にリスナーを獲得してきた。成長は目に見える数字だけではない。

林「活動当初は内省的で自己満足な歌詞が多かったし、自分が楽しければそれで良いという思いが強かったんですけど、応援してくれる方や地元からの後押しが増えてくるにつれて、支えてくれる人の力になりたいという気持ちに変わってきました」

二瓶「ライブハウスで下積みをしてきたバンドではないから、お客さんに聴かれる前提で曲を作ってなかった。今はライブで林が歌ってみんなで演奏するっていう絵を想像しながら制作するようになりました」

この春にメンバーは大学を卒業。6月~7月にかけて、2度目のワンマンツアーを開催する。

二瓶「『学生にしては』みたいな言い訳が通用しなくなるから、楽曲制作も演奏もより本腰を入れないと。お客さんを楽しませるために、まずは我々が楽しみます」

林「いつでもどこでも音楽が聴ける時代だからこそ、その場でしか得られない経験や私たちの思いを直接ぶつけたいです」

彼らの鳴らす矛盾をぜひ生で体感してほしい。

プロフィール

名無し之太郎/ななしのたろう

'24年2月にメジャーデビューしたギターレス4人組。メンバーは林(Vo.)二瓶(Dr.)、中野(Ba.)、高橋(Key.)。

公演情報

名無し之太郎 2nd ONE-MAN TOUR 2026

  • 6/20(土) 18:00 東京・TOKIO TOKYO
  • 6/26(金) 19:00 愛知・ell.SIZE
  • 6/27(土) 18:00 大阪・LIVE SPACE CONPASS
  • 7/4(土) 18:00 北海道・札幌近松

インタビュー・文/サイトウマサヒロ
Photo/中田智章
構成/月刊ローチケ編集部 4月15日号より転載

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