【インタビュー】坂本真綾

 

坂本真綾

坂本真綾が語る、舞台に立つことの喜び

 

声優、俳優、歌手と幅広いフィールドで活躍し続けている坂本真綾。今夏に発売された25周年記念アルバム『シングルコレクション+アチコチ』には、「レプリカ」(TVアニメ「M3-ソノ黑キ鋼-」OPテーマ)「色彩」(Fate新作RPG「Fate/Grand Order」主題歌)など、2013年以降のタイアップ曲がすべて収録されている。

「この8年、貪欲に新しい出会いを求めて、自分自身とも向き合って、我ながらよく頑張ったと労ってあげたくなりました。本当に素晴らしい出会いに恵まれていて、そのおかげで25年も歌い続けてこられたんだなあと改めて思いますね。『これから』は自分で作詞作曲した曲ですけど、ちょうど20周年の節目に作って、これまでの歩みと未来をつなぐような曲になりました」

本作の収録曲の多くが、彼女自身の作詞。「歌詞や文章を書くことは、歌うこと以上に好きなのかもしれないです」という彼女にとって歌の言葉を紡ぐことは、いまやライフワークと言っていい。

「シングルの曲はアニメやゲームの主題歌になっているものが多いですが、その作品の世界観や物語に寄り添いながら、自分の思いやメッセージも込めて書き上げていくことが、難しいんだけど楽しい。メロディと言葉が重なったときに生まれる特別な響きを探して、それが見つかった時は最高に気持ちいいです」

新曲「躍動」も注目を集めている。スマートフォン向けゲーム「Fate/Grand Order」の第2部後期主題歌として制作されたこの曲は、注目のバンド・ユアネスの古閑翔平が作曲、坂本が歌詞を担当。“誰もが許し合う世界 なんて綺麗ごとかもしれない それでもまだ”という歌詞からは、いまの社会に対するメッセージが感じられる。

「ユアネスさんの音楽を聴いていると、たくさんの色が次々と現れて混ざっていくような印象を受けてました。今回お声がけしたらとても喜んでくれて、上がってきたデモからも気合いが伝わってきたし、私のためにこんなに素晴らしい曲を書いてくれたと感動しました。歌詞は『FGO』のストーリーに合わせて書いたのですが、もちろん発したいメッセージは個人的な考えに基づいています。現代はものごとが瞬時にシェアされていく。それが役立つ場面もあるけど、不安や怒りは膨らむ一方で、許すということが苦手になっているような気がします。スピード感を求められる世の中で、それでも自分でひとつひとつ選んでいかないと、気づいたときには遠くまで流されてるかもしれないという危機感があって書いた歌詞です」

11月には全国ツアー『IDS! presents Acoustic Live & Talk 2020』を開催。タイトル通り、アコースティックのライブとトークによるイベントだ。

「CDの音源とはまた違ったアレンジを楽しんでもらえると思います。ライブでは初めて歌うことになる曲もいくつかあると思うし、こんな時期だからこそ来てくれる皆さんがエネルギーをチャージしてってもらえるような、優しく元気になれる曲を選びたいと思ってます」

以前はライブに対し、「苦手なことにチャレンジしている感覚がありました」という坂本真綾だが、ステージを重ねるにつれて、舞台で歌うことの喜びを実感できるようになったという。

「以前はたくさんの人の前で失敗したくない、かっこよく見せなくてはという気負いがあったんだと思います。でもステージに立ち続けるうちに、いつの間にかここがホームだと思えるようになったというか。それはお客様や、支えてくれるバンドやスタッフのみんなのおかげだし、そして自分自身も努力をしてきたと思います。今でも本番前は怖くなったりしますけど、ステージに立てば、ここは自分の居場所だと思って幸せな気持ちになりますね」

すべてのエンターテインメントが危機的な状況に陥っている現在。彼女自身も大きな影響を受けているが、そのぶん“生の舞台”に対する思いはさらに強くなっているようだ。

「9月にミュージカル(「ダディ・ロング・レッグズ」)に出演して、客席の半分のお客様ですが、それでもたくさんの方に観ていただくことができました。そのとき、私たち届ける側も、お客様も、やっぱり生のパフォーマンスを通して繋がることに飢えていたんだなと感じました。配信で多くの方に届けることができるのは素晴らしいことですけど、限られた空間の中だからこそ生まれる濃密なやりとりは格別。私自身、いかにオーディエンスの力をもらってパフォーマンスが成り立っているかを思い知りました。ただ、今は会場に来られない状況の方もいると思いますので、そういう方は次の機会まで焦らず元気に待っていてほしいです。そして私達は、来てくださる方のために、誠心誠意準備をしてお迎えしたいと思ってます。きっと忘れられない時間を共有できるはず。楽しみです」

 

プロフィール

サカモト マアヤ

1996年にシングル「約束はいらない」でデビュー。歌手、声優、俳優、作詞家、エッセイ執筆、ラジオパーソナリティなど、多方面で活躍を続け、2020年にはCDデビュー25周年を迎えた。

 

 

公演情報

 

IDS! presents Acoustic Live & Talk 2020

 

11/1(日)14:00 Zepp Sapporo

11/1(日)18:00 Zepp Sapporo

11/3(火・祝)14:00 仙台PIT

11/3(火・祝)18:00 仙台PIT

11/14(土)14:00 Zepp Fukuoka

11/14(土)18:00 Zepp Fukuoka

11/15(日)12:30 Zepp Osaka Bayside

11/15(日)16:30 Zepp Osaka Bayside

11/15(日)20:00 Zepp Osaka Bayside

11/23(月・祝)12:30 Zepp Nagoya

11/23(月・祝)16:30 Zepp Nagoya

11/23(月・祝)20:00 Zepp Nagoya

11/28(土)12:30 Zepp Tokyo

11/28(土)16:30 Zepp Tokyo

11/28(土)20:00 Zepp Tokyo

11/29(日)12:30 Zepp Tokyo

11/29(日)16:30 Zepp Tokyo

11/29(日)20:00 Zepp Tokyo

 

※公演が中止・延期になる可能性がございますので詳細は各公演の公式HPをご確認ください。

 

インタビュー・文/森朋之

構成/月刊ローチケ編集部 10月15日号より転載