【インタビュー】箭内道彦(風とロック)
2024/2/15(木)
「それ無理でしょ」ということを実現させるのが動ける者たちの使命なんじゃないかと思う
3月に『風とロック さいしょでさいごの スーパーアリーナ“FURUSATO”』が開催される。首謀者はタワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」、リクルート「ゼクシィ」などの広告キャンペーンを手掛け、フリーペーパー「月刊 風とロック」の発行人・編集長、風とロック芋煮会実行委員長、ラジオパーソナリティや東京藝術大学教授も務める箭内道彦だ。今年は箭内が還暦を迎えるという節目でもあるが、それはあくまでひとつの要素でしかないという。
「何周年というのはあまりお客様には関係なくて、発信者の都合だったりもするんですけど、それをキッカケにして新しいことに挑むことができるのであれば、それは自分だけのモノではないだろうと考えたのが大きいですね。自分も還暦になりますけど、そのお祝いパーティーを自分で開くみたいなことではまったくなくて。まだまだ新しいことをしなければいけないし、挑んでいくべきだろうという決意表明という一面もあります」
会場はさいたまスーパーアリーナ。福島県出身の箭内だけあって、これにも深い理由がある。
「さいたまスーパーアリーナは福島県双葉町の方々が、避難生活を送り、役場もそこにありました。福島県からいちばん近い大規模アリーナなんですね。3月というタイミングもあり、そこに強い想いがありました」
2日間昼夜公演でおこなわれるが、ラインナップはまさに異色。箭内曰く、人間としての熱が共通するという乃木坂46とサンボマスター、福島に寄り添い続けるMAN WITH A MISSIONとBRAHMANとACIDMAN、箭内と干支、誕生日、血液型が一緒で走り続ける姿に感銘を受けているさだまさし、同じ北海道を故郷とし、互いに交流はありつつもここが初対バンだというGLAYと怒髪天。果たしてどんな熱気が生まれるのか、今から興味が尽きない。
「新しい出会いの場にもなればいいと思っています。チケットも2日間通しのプラチナ、1日2公演観られるゴールド、そして1公演ずつの単券。いろいろな想いや興味のある人が選べるようにしています」
“さいしょでさいご”と銘打たれているものの、これだけそそられる内容であり、つい次回を期待してしまうところもある。
「公式応援隊という人たちがいて、グランジの遠山大輔さん、亀田誠治さん、マンボウやしろさん、僕がずっとプロデュースしている高橋優なんですけど、その高橋優が『70歳のときに東京ドームというのはできるんじゃないの』と(笑)。10年経って何かするかもしれないし、そういう自分でいられたら幸せだなとは思いますけど、そこはわからないですからね。ただ、これは自分に対するタイトルなんです。お客様にもう観ることができないよ、と言っているようにも見えるけど、最初で最後だから本当に全身全霊で取り組めよ、と自分に言い聞かせているんです」
箭内が旗を振り、開催される2日間。東日本大震災、能登半島地震、あり得ないことが起きたときに俯くのではなく、だったら自分でもあり得ないことをポジティブな形で起こしてみよう、それができるんだというメッセージにも聞こえてくる。
「“それ無理でしょ”ということを実現させるのが大人たちの、動ける者たちの使命なんじゃないかと思って。それが誰かの元気や勇気になったりすると素敵だなと思います」
プロフィール
箭内道彦/やないみちひこ
クリエイティブディレクター。博報堂を経て'03年に独立し、風とロック有限会社を設立。フリーペーパー「風とロック」発行人・編集長も務める。
公演情報
箭内道彦60年記念企画
風とロック さいしょでさいごの スーパーアリーナ“FURUSATO”
- 【風の日】
3/30(土)昼12:00/夜16:55 さいたまスーパーアリーナ - 【ロックの日】
3/31(日)昼11:00/夜16:30 さいたまスーパーアリーナ
出演
- 【風の日】
〈昼〉乃木坂46、サンボマスター
〈夜〉MAN WITH A MISSION、BRAHMAN、 ACIDMAN - 【ロックの日】
〈昼〉さだまさし 他
〈夜〉怒髪天、GLAY
インタビュー・文/ヤコウリュウジ
構成/月刊ローチケ編集部 2月15日号より転載