ピアノとトランペットを自在に操ることから“ジャズ二刀流”の異名をとる、マルチインストゥルメンタリスト・曽根麻央。米の名門・バークリー音楽大学に在学中から国際的なジャズ・コンペティションで優勝。同校の修士課程を首席で卒業した後は、ニューヨークのブルーノートなどの名門ジャズクラブで演奏を重ねるなど、華々しい活躍を続けている。ジャズ界の俊英として注目を集める一方で、自ら主演を務めた映画『トランペット』の劇中音楽で総合ディレクションを担当。Netflixシリーズ『さよならのつづき』(2024年公開)では、ピアノ監修および挿入曲の作編曲・演奏を手がけるなど、映像作品とコラボレーションも重ねてきた。そんな曽根が、4月2日(木)、東京・Hakuju Hall(ハクジュホール)で「曽根麻央 シネマ・ジャズ-Love Story-」を開催する。本公演の聴きどころや曽根ならではのこだわりについてたっぷりと語ってもらった。
――はじめに、「曽根麻央 シネマ・ジャズ-Love Story-」とは、どのようなコンサートか教えていただけますか?
「シネマ・ジャズ」は、映画音楽を彩る名曲を、洗練されたジャズにアレンジを施し、ストリングスの名手たちと奏でるプロジェクトです。
そもそも、このプロジェクトを始めたのは、特に近年のジャズは曲が難解だったりして、「ちょっと敷居が高い」とか、「近寄りがたい」と感じる方もいらっしゃることが気になっていたからです。僕は、ジャズはもっと身近なものだと思いますし、実際に幼いころに触れた1940年代から60年代に創られた、たとえばナット・キング・コールなどのポピュラー音楽はメロディーも美しく、もっと親しみやすいものだったと思います。実際に僕は、そうした音楽を身体に取り込みながらジャズを自然に学び、自分になじませてきたところもあります。ですから、映画音楽などの原曲の美しさを僕なりにジャズ的な表現を使いながら表現したいと考えたのです。
――今回はサブタイトルに「ラブ・ストーリー」とあるように、ラブソングを中心に選曲しているようですね
はい。たくさんの曲が候補に挙がったのですが、なかでもこの曲はどうしてもやりたいと最初から決めていたのは映画『海の上のピアニスト(Legend of 1900)』の「Playing Love」(エンニオ・モリコーネ作)と、映画『ノッティングヒルの恋人』の主題歌「She」(エルヴィス・コステロ歌唱)でした。
まず、「Playing Love」は、僕が小学3年生くらいのときに出会った曲で、メロディーの美しさやクリシェと言われる進行による曲の流れのキレイさに心を奪われ感動したんです。「こんな壮大で美しい曲を自分でも作ってみたい」と思い、僕自身が作曲を始めるきっかけにもなっているんです。
――小学3年生で、国際的な映画賞で作曲賞を授かった名曲に触発されて曲作りを始めるとは、さすがですね
当時は音楽理論も分かっていませんし、今振り返るとただただ見よう見まねで作ってみただけでした(笑)。もう1つの「She」は、実は映画よりも先にシャルル・アズナブールが歌うシャンソンのオリジナルバージョンが好きで、以前からよく聴いていました。今回のコンサートで演奏するために、改めて映画を観たことで映画の魅力を再確認できましたから、「シネマ・ジャズ」により似合うアレンジに仕上がっているんじゃないかなと思います。
僕自身、『さよならのつづき』の音楽を手がけたとき、映像と呼吸を合わせるようにしてすごく手間暇をかけて制作したことで、映像と音楽が引き立て合うような作品になったと思います。今回、演奏する映画音楽はとてもポピュラーで、耳になじんだ楽曲が多いと思いますから、演奏を聴きながら映画のシーンを思い返したり、映画を見た当時のご自分を思い出す…ということもあるのかなと。音楽を聴くだけでなく、楽曲とお客様のパーソナリティなつながりや思い出も楽しんでいただけるコンサートになるんじゃないかなと思いますね。
――今回の披露されるアレンジについて、こだわったところや意識した点を教えていただけますか?
今お話ししたように、どのオリジナル楽曲にも大切な思い出や思い入れがある方が多いと思いますから、全体的には原曲を尊重し、そこに少し色どりを添えるようなアレンジも少なくありません。ただ、「酒とバラの日々」のようにジャズの要素を強めに利かせたものもあり、それによって楽曲の新しい魅力を引き出せたらなとも思っています。
「枯葉」は、もともとシャンソンですが、先ほど名前が出たナット・キング・コールなども歌うなどして、世界中で広く親しまれてきました。多彩な表現が可能なため、今回はボサノヴァを取り入れたアレンジで披露してみたいなと思っているんです。いずれにせよ、僕はジャズシーンにおいてかなりメロディーに関してこだわりがあると自負していますし、メロディーの美しさを損なわないアレンジに心を砕きました。映画音楽として映画の中で流れるときは、ほかの要素も含まれるためメロディーを抑えていることもあるので、コンサートでは楽曲本来の美しさを再発見していただけるんじゃないかなと思います。
――映画音楽の枠を超えて、幅広い楽しみ方ができそうですね。共演するビルマン聡平さん(ヴァイオリン)、西谷牧人さん(チェロ)についてご紹介いただけますか?
昨年8月、今回と同じハクジュホールで「僕らの音楽会 ドリアン・ロロブリジーダ×ビルマン聡平×曽根麻央」を開催しました。そのとき、ビルマンさん、西谷さんとご一緒して、クラシック界で活躍する一流の演奏者として美しい音色を響かせることもできますし、また、ストリングスであるにもかかわらずお2人のコンビネーションによるリズムの素晴らしさに衝撃を受けました。
ですから、今回の「シネマ・ジャズ」でぜひご一緒したいと思ったのです。というのも、今回の映画音楽、特にアメリカの楽曲はリズムが非常に重要になります。ドラムが居ない編成で、僕がリズミックな部分を担当することもありますし、お2人がそれを補足することもできるからです。互いにサポートしながら、3人ならではのアンサンブルをお届けできるのが今回のコンサートの大きな聴きどころになると思います。
――では、最後にハクジュホールで行われる「曽根麻央 シネマ・ジャズ-Love Story-」にお越しになるファンへのメッセージと、2026年度の抱負をお聞かせください
ハクジュホールは生音がとても似合うホールで、残響…、リバーブの深さがとてもいいんです。すべての音がはっきりと粒立って聴こえ、しっかりと前に出てくるところが魅力的なホールですね。3人による正真正銘のアンプラグドのライブですから、それぞれの音の美しさを身体いっぱいに体感していただけると思いますので、楽しみにしてください。
そうそう、いま実は、新たな映像作品とのコラボレーションの話も持ち上がっているところなんです。そうしたニュースをお届けできたらうれしいですし、コンサートも、5月にレジェンド・ロック・ギタリストのマーティ・フリードマンと再共演したり、三味線奏者の浅野祥さんとのユニット“MAOSHO”にバンドネオンの三浦一馬さんを加えたプロジェクト「鼓武士トリオ」も動き出します。ジャンルや国境の垣根を超えた、新鮮で驚くような音楽をお届けしますので、ぜひ今後も曽根麻央にご期待ください!