クラシック

【インタビュー】山中惇史│山中惇史 ピアノ・リサイタル

【インタビュー】山中惇史

【インタビュー】山中惇史

ピアニスト、作曲家として活躍中のピアニストの山中惇史が、2月6日(金)に東京・Hauju Hallでピアノ・リサイタルを開催する。その公演を目前にした彼にリサイタルのこと、パリでの生活などの話を聞いた。


――今回のリサイタルのプログラム前半は、ピアノ・ソナタでまとめられていますね

まず、ショパンの《ピアノ・ソナタ 第3番》を弾きたいとの想いがあり、それを軸にプログラムを考えていきました。ショパンのこのソナタを、今回初めて演奏します。
ロ短調のピアノ・ソナタについては、ショパンのほかに、リストやR.シュトラウスが作曲しています。でも、ロ短調のピアノの曲はあまり多くありません。そこで思いついたのが、アンヌ・ケフェレック先生の十八番、ハイドン《ピアノ・ソナタ 第47番》ロ短調でした。僕がフランスへ行くきっかけとなった曲で、彼女のその演奏を聴いた瞬間、「この先生に習おう!」と心に決めました。リサイタル前半、その2曲のロ短調のソナタを演奏します。


――山中さんの思い描くロ短調のイメージを教えていただけますか?

「受難」というイメージでしょうか。それは、バッハの《ミサ曲 ロ短調》に影響されていると思います。


――後半のプログラムには、山中さんの作品とともに、ドビュッシーやショパンのよく知られた作品が並んでいます

プログラムのほとんどが、ケフェレック先生と勉強した曲やフランスに関わりのある曲です。前半のプログラムがけっこう重いので、後半は短めの曲を集めてみました。
僕は、パリの街を毎日2時間ぐらい散歩しています。《上を向いて歩こう、ただし足元にもお気をつけて》では、その時に得たインスピレーションや街の雰囲気を描きました。2曲目の《少しくらい濡れたって歩きたい気分》は、雨の日に駅からケフェレック先生のご自宅へ向かう時のお話です。森を通って行くと、そこにはメリーゴーランドがあったり、馬がいたりします。普段でしたら雨に濡れて嫌なところですが、先生のレッスンへ行く高揚感もあり、その街の雰囲気も幻想的でとても楽しそうで…そんなフランスでの風景を音楽で表わしてみました。続く《月の光》は、僕のなかでは“水”の音楽。月の光をそのまま表現したものではなく、月の光が水に映える情景を描いた曲だと僕は思っています。前に弾く僕の曲は雨にちなんだ作品で、水を扱っている点で結びついています。《舟歌》も水つながりですね。そして、クライマックスとしてショパン《スケルツォ第2番》をプログラムの最後に置きました。《舟歌》も《スケルツォ第2番》も、ケフェレック先生と一緒に勉強した作品です。


――《月の光》のどのような部分に“水”を感じますか?

曲の揺らぎ方だと思います。水面にたゆたう感じに聴こえるのです。ですから、《舟歌》と合わせて弾きたいとずっと思っていました。
《月の光》が変ニ長調で終わったあと、《舟歌》は♯ドで始まります。《月の光》の前に演奏する僕の曲も、♯ドで終わります。水のテーマでつながり、しかも、その3曲の中心音は♭レと♯ド(筆者注:同じ鍵盤)ですので、演奏していてもそれぞれの曲のつながりを感じますね。


――パリでは、どのように過ごしていますか

パリでは、基本的に語学学校へ行ったり、ピアノを練習したり…それ以外の時間は、散歩したりしています。さまざまな国籍の人が集い、肌の色も違えば目の色も違い、性別もいろいろな人がいます。「私はあなたのことを認めているよ」というような押しつけがましさもなく、かといって冷たくもなくとても良い距離感でいろいろな人々がそれぞれの人生を送っているところが好きですね。でも、そのように感じるのは、僕が外国人だからかもしれません。


――現在、パリでフランス語を勉強されています。フランス語とフランス音楽とは結びついていますよね

フランス語とフランス音楽は、ほぼ同じと言っていいほど関わりがあります。日本語を話すときには大事な言葉を強調します。しかも、区切って強調することが多いですけれど、フランス語についてはそういうことはほとんどありません。演奏についても、大切なフレーズだと思って強調して弾くと、途端にフランスっぽくなくなってしまうのです。
フランス語は、一定のリズムで言葉を刻んでいきます。一定のリズムの中で、抑揚をつけることはあるけれど、一定のリズムで進んでいかなければ、フランス人は理解してくれません。発音が少し変でも、リズムさえよければ理解してくれることも多く、それはフランス音楽の演奏についても言えます。言語を勉強して、初めて得た感覚かもしれません。


――最後に、このリサイタルについて、読者のみなさまにメッセージをお願いします

前半は、長大なピアノ・ソナタの醍醐味を感じていただけると思います。後半では、聴きやすい比較的短めの作品を。それぞれの作品のカラーを感じていただきたいと思っています。


インタビュー・文/道下京子

掲載日/2026年1月13日


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