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【開幕レポート】「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2022」Bプログラム

【開幕レポート】「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2022」Bプログラム Presentation licensed by Disney Concerts. ©Disney

開幕レポート!「ディズニー・オン・クラシック 2022」Bプログラム

大フィーチャーの『ノートルダムの鐘』は感涙&鳥肌もの!

「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2022」のコンサートが9月10日(土)、東京都八王子市のJ:COMホール八王子で初日を迎えた。ディズニーのアニメーションや実写映画でおなじみの名曲やテーマパークを楽しく彩ってきた楽曲たちを、フルオーケストラの迫力満点の演奏と、ニューヨーク・ブロードウェイのミュージカルシーンで活躍するヴォーカリストのとびっきりの歌声で届ける大人気の公演だ。記念すべき20周年を迎えた今年のツアーは12月25日(日)の千秋楽まで、全国37都市で 54公演が予定されている。ディズニー映画の長編1作品の音楽が全編披露されるメインプログラムとして今回用意されているのは、『塔の上のラプンツェル』と『ノートルダムの鐘』だ。前者はA公演、後者はB公演と銘打たれ、1回のコンサートで堪能できるのはどちらか1作品のみ。A or B?と大いに迷うところだが、今回は「オペラティックで重厚感がハンパない」「生演奏と生歌の醍醐味が存分に味わえる」とウワサのBプログラムで『ノートルダムの鐘』を鑑賞。その様子をたっぷりとレポートします!


「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2022」はAプログラム、Bプログラムともに二部構成。第一部はディズニー映画の大ヒット曲やテーマパークからの楽曲が幅広く楽しめる、A・B共通の内容(約40分)となっている。

まず東京ディズニーランド®の『ディズニー・ファンティリュージョン!』から「フェアリー・ガーデン」 が演奏されるなか、2002年の第1回から昨年第19回までの映像が流れ、20周年のお祝いムードが一気に高まる。ルーレットを使って複数の曲の中からその場で演奏ナンバーを決める企画コーナーで盛り上がったあとは、過去のファン投票のベストセレクション、『メリー・ポピンズ』組曲と圧巻のパフォーマンスと続く。コロナの影響でアメリカのヴォーカリストを迎えるのは3年ぶりのことだが、男女各4人、計8人の出演者全員の歌唱力、表現力がとにかくバツグンで一瞬にしてステージに引き込まれる。また『リトル・マーメイド』からのナンバー「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌い上げるほか、『メリー・ポピンズ』組曲でもソロパートの多いケイティ・トラビスの美しく伸びやかな歌声には大いに癒された。8人がペンライトを持って歌う場面では客席のファンも一緒にペンライトを振って盛り上がれるのも楽しい演出だった。



曲と曲の合間ではナビゲーターのささきフランチェスコさんが、2019年にディズニー・オン・クラシック指揮者に就任して以来約3年ぶりの来日となったリチャード・カーシーさんにインタビューし、コロナ禍で一変した生活について尋ねる場面も。音楽、ディズニー・オン・クラシック、そして日本のファンが恋しくてたまらなかったというカーシーさんのコメントにはこちらも感激して、「おかえり!」という気持ちを込めて大きな拍手を自然と贈っていた。

20分の休憩を経ていよいよプログラムBのハイライト『ノートルダムの鐘』のパートに突入!
15世紀のパリを舞台にノートルダム大聖堂で鐘つきとして暮らす、心優しい青年カジモドが主人公の物語。生まれて間もなくジプシーだった母親が実は育ての親である最高判事フロローの手によって殺害されたとはつゆとも知らない彼に「出来損ない」という意味の名前を与えた養父。「おまえは醜い怪物。みんなに嫌われるから決して外に出るな」というフロローの命令を従順に守っていたカジモドだったが、年に1度のお祭りの日に念願だった外出を決行する。ひょんなことから美しいジプシーの娘エスメラルダに出会い一目惚れするが……。

ディズニー作としては珍しく見目麗しくないキャラが主人公。外見に基づく偏見や差別といったルッキズムの問題にも触れている。ダークでシリアスな描写も多い上、それを支える音楽も荘厳で重厚感があるのでとっつきにくいイメージがあるかもしれない。しかし奥行きのあるストーリーと音楽が堪能できる本作を、ディズニー映画屈指の名作に挙げるファンや批評家も少なくないと言われる。

今回鑑賞してみての総括をまず述べてしまうと、『ノートルダムの鐘』こそフルオーケストラの演奏が土台にあるディズニー・オン・クラシックでぜひ見るべき1本!ということだ。オープニングナンバー「ノートルダムの鐘」の演奏が始まると聖歌風のメロディーと鐘の音で、その時代の大聖堂へとタイムスリップしたような気分になる。「僕の願い」の前半は絶対服従を強いるフロローとの息苦しい“デュエット”だったのが、カジモド独りとなる後半は外界への憧憬を生き生きと歌い上げる“モノローグ”になる対比が見事だ。主人公が初外出をして、パリ一の醜男を決めるコンテストで優勝する様子を描いた「トプシー・ターヴィー」はアップテンポかつグルヴィーでお祭り感たっぷり。一転エスメラルダが大聖堂の中で歌う「ゴッド・ヘルプ」は、しいたげられたジプシーたちの救済を神に請う美しいスローなナンバー。舞台上に映し出される作品の場面写真や映像を見るべきか、キャラになりきって情感豊かに歌い上げるヴォーカリストに注目すべきかと最初はキョロキョロしまくりだった目線も、このあたりになるとだいぶ落ち着いてきた(あれこれ余計なことを考える余地もないほど演奏に夢中になったといったほうが語弊はないのかも?)。

「天使が僕に」ではカジモドが、長い間唯一の友達だった大聖堂の石像3体(人)にエスメラルダへの片思いを打ち明けるちょっと切ない1曲。直後にフロローが歌う「罪の炎」は聖歌のように静かに美しい音色で始まるが、エスメラルダに抱くゆがんだ恋愛感情に端を発し、拒絶される恐怖によって憎悪の炎が燃えたぎっていくほどおどろどろしい曲調に。強欲さや欺まんといった人間のダークな部分を見事に描いたナンバーはちょっと怖いくらいだった。

ここからクライマックスに向け怒涛の展開を見せる物語は音楽もドラマチックで聞き応えがあった。カジモド役のパトリック・ブレイディ、エスメラルダ役のトリシア・タンガイ、フロロー役のディロン・ヒープは3人とも適役ですばらしい歌声を届けてくれた。8人のアンサンブルで大聖堂の厳かな雰囲気や祭りの喧騒といったいろんな場面も見事に表現していた。

また創立8年目を迎えたオーケストラ・ジャパンの演奏の完成度の高さと迫力もすさまじかった。過去にも『ノートルダムの鐘』を全編演奏しているからだろう、今回潜入したのは初日直前のゲネプロ(照明や衣装も本番と同じように行われる通し稽古)の段階だったにもかかわらず鳥肌の立つような音色だった。ヴォーカリスト8人の熱唱との相乗効果でウルッとしてしまう場面も何度かあるほどだった。コロナでライブに飢えていたこともあるだろうが、「これぞ生演奏、生歌の醍醐味!」と思わせてくれる第二部だった。『塔の上のラプンツェル』よりもオーケストラの編成も大きいそうなので、より重厚な音が楽しみたい人はぜひプログラムBを選んでみては?
ここまで完成度の高いパフォーマンスを引き出した指揮者のカーシーさんにも改めて拍手を贈りたい。



『ノートルダムの鐘』を堪能したあとのアンコールでは、ディズニーの古いある名曲を1つ日本語の歌詞で歌ってくれたのにもグッときた。やっぱり楽しくて元気になれるディズニー・オン・クラシック。これからも30年、40年と続いてほしいコンサートだ。



取材・文/山本航

Presentation licensed by Disney Concerts. ©Disney

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