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【開幕レポート】「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2023」

【開幕レポート】「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2023」

開幕レポート!

ディズニー創立100周年記念の特別メドレーに酔いしれる!

「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2023」のコンサートが9月16日(土)、東京都文京区の文京シビックホール 大ホールで初日を迎えた。ディズニーのアニメーションや実写映画でおなじみの名曲やテーマパークを楽しく彩ってきた楽曲たちを、フルオーケストラの迫力満点の演奏と、ニューヨーク・ブロードウェイのミュージカルシーンで活躍するヴォーカリストのとびっきりの歌声で届ける大人気の公演。21年目を迎えた今年のツアーは12月下旬の千秋楽まで、全国32都市で51公演が予定されている。2023年はディズニー設立100周年とのことで大きな節目を祝う特別メドレーが披露されるほか、アニメーション映画として初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされた名作「美女と野獣」がフィーチャーされる。初日前日に開催されたゲネプロに潜入。その様子をたっぷりお伝えします!

「ディズニー・オン・クラシック ~夢とまほうの贈りもの 2023」は、シンデレラ城が出てくるディズニー映画のあのオープニング映像がスクリーンに映し出される中、「星に願いを」の美しい調べで幕を開ける。秋冬のツアーでは第2部のメイン演目が始まる直前にこの映像&演奏が流れるのが恒例なのだが、ディズニー100周年の今年はあえて冒頭に持ってくる変更が加えられているのだ。たった数十秒にもかかわらずオーケストラ・ジャパンの完璧な演奏のおかげで一気に夢の世界へと誘われる。

第1部は「ディズニー100:ディズニーが育んだ物語」と題したプログラム。ウォルト・ディズニーが兄のロイとロサンゼルスでスタジオを設立した1923年からちょうど100年にあたる年に、ウォルトが「Welcome!」とほほえむ映像が流れるのも心憎い演出だ。アニメーターや音楽家などディズニーで活躍した全クリエイターへのリスペクトを込めて演奏し、歌うとのコンセプトで新旧19の作品からのナンバーが披露される。

まずはミッキーマウスのスクリーンデビュー作である『蒸気船ウィリー』から。軽快な音楽がモノクロ映像と見事にマッチ。船上のミッキーの喜怒哀楽たっぷりのリアクション(ボイス)もヴォーカリストによって忠実に再現される。続いて世界初の長編カラーアニメ映画の『白雪姫』から「いつか王子様が」披露される。ソリストの伸びやかな高音が耳に心地いい。このあとも『ピノキオ』『シンデレラ』『眠れる森の美女』といったクラシック作品からのナンバーが次々と演奏・歌唱されていく。美しい調べの連続にうっとりする。

『メリー・ポピンズ』の「チム・チム・チェリー」はちょっと物悲しいメロディーではあるけれど、煙突掃除がいかに素晴らしいかというお仕事賛歌で、ヴォーカリストのコミカルな歌唱力や仕草もあって最後は晴ればれした気持ちで拍手ができた。個人的にものすごくよかったナンバーは、『ピーターパン』の「きみもとべるよ」だ。ピーターパンとティンカーベルと一緒にウェンディーと弟たちが空を飛ぶシーンを見ながら男女各4人計8人のヴォーカリストが♪You can fly! You can fly! You can fly!♪と軽快に歌っているのを聞いていたら気分がアゲアゲに。アラフィフのおっさんでも(だからこそ?)即効元気になるディズニー音楽のパワーは最強だなー。

このあとも『リトル・マーメイド』『ライオン・キング』『トイ・ストーリー』『アナと雪の女王』『ミラベルと魔法だらけの家』といった後期の作品から、なじみ深いヒット曲のオンパレードとなる。音楽と映像とともにディズニーの歩みを振り返ることのできる構成は◎。合間にはプレゼンターのささきフランチェスコが、お宝映像(例えばディズニー映画の名曲を作ったシャーマン兄弟がウォルトと一緒に歌う映像)などを交えながら、創成期から成長期、ルネッサンス期とディズニーの歴史を紐解いてくれるのもファンにはうれしい演出のはず。また『パイレーツ・オブ・カリビアン』『スター・ウォーズ』『アベンジャーズ』の楽曲も登場。レーザービームを駆使した照明の演出が壮大な音楽をより盛り上げていた。

そして第1部のフィナーレは飾ったのは、『ファンタジア2000』よりエルガー作曲の「威風堂々」だ。旧約聖書の中の「ノアの方舟」をベースにした物語が展開する映像の主人公はドナルドダック!コミカルな描写と文字通り威風堂々とした管弦楽のための行進曲のミスマッチの妙が何とも言えない。映像とオーケストラの演奏で魅せる、迫力あるラストとなった。


「美女と野獣」の音楽&世界観を大満喫!

20分の休憩をはさんでの第2部はいよいよ、『美女と野獣』をフィーチャーしたプログラムの始まりだ。1991年のアニメ版はもちろん2017年の実写版も大ヒットした本作の主人公は、読書と空想好きな娘ベルと、傍若無人な振る舞いが魔女の逆鱗に触れ野獣へと姿を変えられてしまった王子。ディズニー・オン・クラシックで2019年から指揮を務めるリチャード・カーシーは、「大きなテーマは『真実の愛』です。芯が強く優しい心持ちのベルとの出会いを通じて、見返りを求めず相手を思いやる無償の愛を注げるようになる野獣の変化はグッとくるものがあります」と、直前のインタビューで作品について話してくれていた。そんな彼はさて、どんな演奏を引き出してくれるのだろうか?

オープニングの「朝の風景」は、本を手に書店へと向かうベルと、仕事に精を出す村人、そして村一の美人ベルにぞっこんのマッチョな色男ガストンの心の声が聞こえてくるナンバー。爽やかな朝っぽい曲調で始まるが、みんなの願いがにぎやかに歌い上げられる曲終わりではすっきり目覚めたような気分になる。映画では総勢何百もの人物が出てくるシーンを8人だけで歌い上げる成立させてしまう力量に拍手!ベルに求婚を断られ凹むガストンをル・フウが鼓舞する「強いぞ、ガストン」や、家具や食器に変身させられた野獣の召使いたちがお城に来たベルをもてなす「ひとりぼっちの晩餐会」、ベルと野獣の仲に嫉妬したガストンが村人を引き連れお城を奇襲する「夜襲の歌」も同じように大勢が登場する場面で歌われるスケールのものだが、これらも見事8人のチームワークでワッと盛り上げていた。それから「ひとりぼっちの晩餐会」は曲が終わったと思ったら、もう一度アンコール演奏が。そう、これは観客もステージと一緒に歌って踊れる貴重な時間なので、恥じらいを捨ててぜひ参加してみて!

打って変わって主人公2人が歌う「愛の芽生え」は、相手への恋心にお互い気付き始める姿が初々しいことよ!リチャードと一緒にインタビューに応じてくれたベル役のシェイレン・ハージャーと野獣役のヒュー・エントレキンのツーショットと声の相性もバツグン! また主題歌で、2人が初めて踊るシーンにかかるバラード「美女と野獣」はやっぱり名曲だなと再確認する。ポット夫人として歌うジュリア・ホサックの深みのある歌声は、間違いなくこのコンサートのハイライトの1つだと思う。さらに今回は実写版にしか登場しない、野獣の健気さがしみるナンバー「ひそかな夢」も披露されていた。実写版ファンにはたまらないだろう。

「奇蹟の変身」が演奏され「ああ、もう終わりか!」とやっと我に返るくらい没頭してしまう圧巻のパフォーマンスだった。最後は「星に願いを」を会場全体で日本語にて熱唱(コンサートマスター・青木高志による冒頭のバイオリンのソロの音色もステキすぎる!)。「まほうの夜の音楽会」と銘打っているだけあって、やっぱりマジカルな時間だったと満ち足りた気分で会場を後にした。元気がモリモリもらえるので、特に最近お疲れ気味の方はぜひ会場へGO!



取材・文/山本航




「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2023」公演情報│ローチケ[ローソンチケット]

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