クラシック

【インタビュー】宮田大・大萩康司 Travelogue

【インタビュー】宮田大・大萩康司 Travelogue

宮田大・大萩康司

宮田大・大萩康司

大萩康司・宮田大


チェロとギターという、珍しい組み合わせのデュオ。しかし、宮田大と大萩康司が奏でるアンサンブルを聴くと、これまでこの楽器の組みあわせがあまりなかったことが、不思議に思えてくる。


初共演以来、デュオでの舞台を重ね、昨年12月にはアルバムもリリースした。自然な呼吸で音楽が流れ、二つの楽器の音が、絶妙に混ざり合う。


宮田「音楽性が似ているんだと思います。同じ音楽の波の中にいるから、お互いにスイッチを入れるタイミングがわかるんですよね。あと、クレッシェンドするときの、振り切れずに一歩手前でとどまる感覚も、とても近い」


大萩「大くんは、もし自分がチェリストだったらこう弾きたいなという理想の通りに演奏してくれるんです。だからこちらも、なんの迷いもなく思い通りに演奏できます」


音域は近いが、チェロは擦弦楽器、ギターは撥弦楽器。音を発する方法が異なるため、数年前の初共演の前は、うまくいくか不安だったという。


宮田「でも、実際に合わせてみたらすぐにその心配はなくなりました。大萩さんのギターの音は、もはや点で聴こえてくることがなく、とても自然に流れていました」


宮田大

宮田大


大萩「大くんは相手の音を本当によく聴いてくれるので、ニュアンスに変化をつけたらしっかりそれを受け取って反応してくれる。それがもう感動的で、じゃあ次はこうしようという欲求がどんどん出てくるんです」


今度のコンサートでは、アルバム同様「Travelogue」(旅行記)をコンセプトに、サティ、ラヴェル、ニャタリ、ピアソラを披露する。


宮田「チェロとギターのアンサンブルってどんな音がするのだろうというお客様も多いと思うので、はじめはフランスもののハーモニーでその雰囲気を味わっていただきます。原曲とはまた違った、この二つの楽器ならではの色彩感が出せたらと思います」


大萩「チェロとギターのアンサンブルは、最弱音の表現に魅力があります。はじめは少し音が小さいかなと感じても、聴いているうちにだんだん聴覚が開いていくはず。その一方で、舞台が揺れるくらいのチェロの豊かな音が響く瞬間もありますから、そんな音楽の振り幅を楽しんでいただけたら」


ニャタリの「チェロとギターのためのソナタ」は、唯一、この組み合わせのためのオリジナル曲だ。


宮田「ニャタリはなじみのない作曲家かもしれませんが、ボサノヴァ的な要素も感じられ、ラテンのリズムが生きています。まさに二つの楽器で会話が繰り広げられるような作品。一度聴いたら虜になると思います」


そして最後に置かれているのは、今年生誕100周年、アルゼンチンの作曲家、ピアソラの作品。


大萩「録音の時にも、納得するまで何十回もテイクを重ねたので、すでにアイデアのストックがたくさんあります。ここからコンサート当日までさらにイメージが膨らんでいくと思うので、生演奏がどうなるのか楽しみにしていただければ」


大萩康司

大萩康司


それでは、二人がアンサンブルをしていて楽しいと感じるのは、どんな瞬間なのだろうか。


宮田「やっぱり本番中、お互いの音楽的なアピールが重なって目が合うとか、逆に、アクシデントで気が散りかけて二人で集中に戻ろうとするときですね。スリリングな瞬間も含めて、すべてが楽しいです」


大萩「僕はもう、チューニングのときからかな(笑)。大くんの丁寧な音の扱い方がすごく好きで、一緒に音を合わせている瞬間から、わぁ、すごくいい音と思って、ワクワクする。みなさんも、ぜひチューニングから楽しみにしてほしいです」


音楽的にも、人間的にも信頼を寄せ合う二人。コンサートでは、そんな関係性だからこそ生まれるあたたかくエキサイティングなやりとりに期待したい。


インタビュー・文:高坂はる香



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