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【インタビュー】金谷かほり×田中公平「ワンピース音宴 イーストブルー編」

【インタビュー】金谷かほり×田中公平「ワンピース音宴 イーストブルー編」
(写真左)金谷かほり氏(写真右)田中公平氏

この夏、大ヒットアニメ『ONE PIECE』の新たなステージが誕生する。『ONE PIECE』の世界を音楽とパフォーマンスで体現する今までにないステージになるというのだが、“今までにない”とひと言で言われても、一体何が新しいのか、見どころはなんなのか、どういったものなのか。全貌が明らかにされていない公演について、演出・構成・振付を担当する金谷かほり氏と、音楽監督を担当する田中公平氏にこの新たな挑戦がいかなるものなのか、たっぷりとお話を伺ってきた。


「ワンピース音宴」でライブの素晴らしさを味わってほしい

金谷 新しいタイプのエンターテイメントになるので、自分でもまだ探っている部分があるんです。『ONE PIECE』という漫画の素晴らしさ、音楽の素晴らしさを、ブラスバンドやマーチングバンドの動きとともに、そのシーンを再現してみせるというもので、フィルムコンサートや2.5次元舞台とはちょっと違ったスタイルになるかなと思っています。

ルフィ、ゾロ、ウソップ、サンジ、ナミというキャラクターを演じるパフォーマーのダンスやアクションと、管楽器やパーカッションを体の一部のように扱うミュージシャンの演奏によって作り上げられるステージで、『ONE PIECE』の始まりのエピソードを描き出す。この「イーストブルー編」は確かに人気があるのだが、数多あるエピソードの中からなぜそこを選んだのだろうか。

金谷 それは・・・未来永劫続けていきたいからです(笑)。シリーズを延々とやりたいので、まずはここから、ですよね。私も『ONE PIECE』が大好きなんですけど、ファンの方たちとずっと一緒に演目を通して旅をしていきたいなと。

続編を見据えて上演される今回のステージでは、まさに仲間になっていくところをフィーチャーし、それぞれが抱える事情など“麦わらの一味”が結成されるまでを描くという。2年ほど前からこの話が持ち上がっていたというのだが、話をもらった時から金谷氏は前のめりで話を受けたのだそう。

金谷 小さい子が観て楽しいものですし、この生バンドの公演を観て子どもたちがもっと音楽を身近に感じてくれたらいいなあと。アニメを見る素晴らしさもありますが、ライブを見る素晴らしさも味わってほしいんです。私は小学校低学年の頃初めて見たフラメンコで衝撃を受けたんですが、その衝撃は今でも覚えているほど。そんな風に子どもにとって何かのキッカケになるかなと思ったんですよね。

田中 あと、オタクさんたちもね。彼らのパワーは凄いんです。以前「サクラ大戦」で、外に出たことがなかった皆さんが会場に来てくれたんですが、それ以来すっかり舞台オタクになったという人がたくさんいたんです。自分の扉を開いてくれたのはうれしかったですね。このステージでも同じことをやりたいです。

金谷 舞台とかライブって、同じ空間を共有する感覚になるじゃないですか。ゲームなんかでも没入感は味わえると思うんですが、ライブの感動はなかなか味わえるものではないので、ぜひ劇場に足を運んでくれるようになったらと思います。

田中 “マンパワー”の良さを感じ取ってほしいですよね。毎回違うグルーヴ感が出て、「昨日の公演より今日の公演のほうが絶対によかったよね!」みたいなのがいいかなと思うんです。

金谷 私がよく思うのは、お客様と演者との“両想いになるモーメント”ですね。いつも会場の一番後ろから舞台を見ているんですが、ある瞬間に双方が両想いになるモーメントがくるんです。そのばっちり両想いになった“両想い感”が高まっていく様を見ていると、ライブの持つ魅力は凄いなあと思いますね。ブラスバンドなどの演奏の素晴らしいところは、大勢で一つのゴールを目指すこと。『ONE PIECE』のストーリーと音楽が持っているこの性質が一つになったときに物凄いパワーになると思うので、それが伝われば一番ですね。

田中 日本人ってあんまり熱狂しないじゃないですか、でも最後に自然にみんなが立ち上がってしまうような舞台って、最高ですよね。今回のステージは、静かに始まって最後にはオールスタンディングみたいになったらいいなと思います。

金谷 あと、これはファミリーのエンターテイメントなので、家に帰った後とかに「あれがよかったね」と話ができるようになるといいなあと。気持ちがお土産になるといいですね。『ONE PIECE』は一家全員がファンという方が多いので、一緒に観ることで親子の絆も深まるんじゃないかな。生演奏の素晴らしさと演者それぞれの技術を一つに集めて、『ONE PIECE』の曲をお客様に届ける、まるで“麦わらの一味”のように“仲間でものを作る素晴らしさ”が家族に伝われば、お家でいいコミュニケーションも図れるのではないかと期待しているんです。

音楽パフォーマンスで魅せたい

金谷 今回の公演では、今までにあるアニメキャラクターを使ったエンターテイメントとは違う、もう一つ上をいくものを作りたいんです。

田中 音楽パフォーマンスだよね。2.5次元舞台とかはそこで演奏しているわけではないので、そういう意味で今回は“全部がライブ”。演者がテープに合わせて動くのではなく、バンドが演者に合わせて演奏する。全てが生演奏なので、画期的ですよね。

金谷 音楽によりフォーカスした演目になりますね。素晴らしい音楽と演奏者がいて、そこにエンターテイメント性をプラスして『ONE PIECE』のシーンを再現していく。『ONE PIECE』はストーリーも然ることながら、音楽が素晴らしい。その音楽をライブで聴いていただくのが新しいと思うんです。誰もやっていないので大変になるかなとは思うんですが、うまくいけば素晴らしいものになるんじゃないかと思っています。

田中 そういえば、キャラクターたちのセリフはあるんですか?

金谷 今の段階ではセリフは少しだけにしようと思っています。音楽の世界観で見ていただきたいんですよね。有名なシーンの言葉も、ファンでなくとも見て感じ取れるようにしたいなと思っています。言葉がないけれども観ていればわかるバレエと同じように、音楽の力でお客様の感情を動かすことができたらいいなと思っているんです。音楽の迫力を感じていただけたら嬉しいですね。

田中 ミュージカルなんかだと、セリフに入るとそれまでの音楽の音量が、セリフを聞かせるためにスッと下がるんです。でも今回はそんな風に音量を落とすことができないので、ちゃんとした音圧を保てる分、音楽的にいい環境かなと思いますね。

金谷 音楽のピークがシーンのピークとなるようなものをお見せできたらと思いますね。

田中 でも演奏しながら演技もしなくちゃいけないから大変ですよね。

金谷 そうなんです。演奏者の方々はフォーメーションを組みながらステップとかの振りがつきます。海兵や海賊などのキャラクターの衣装を身に着けて、演奏しながら動き回るんですが、対決シーンなどもバンドが二手に分かれて、シーンを作っていくようになります。聞こえているものとビジュアルで音楽の流れをどう見せるのかというのが挑戦になるのかなと思いますね。キャラクターを演じる役者さんたちは、基本的に演奏はせず、演奏している方々と一緒に、皆さんが大好きなアニメの有名なシーンを演じていくようになります。あとは『ONE PIECE』を知らないお客様にどこまで理解してもらえるか、なんですよね。

田中 そう、そこが問題。

金谷 『ONE PIECE』の素晴らしさや、どういうシーンでどう心が動いているのかとかを上手にわかるようにしなければいけないと思っています。ストーリーを知らなかったとしても、「わからなかったー」ではなく「へえ、『ONE PIECE』にはこういうシーンがあるんだー」と満足していただけるように持っていかれたらと。

田中 海外公演とかもやりたいよね。セリフがないんだし。

金谷 ノンバーバルのほうが世界中のお客様に楽しんでいただけますよね。『ONE PIECE』を知らない方にもその素晴らしさを知っていただきたいんです。世界中の人や子どもが『ONE PIECE』を読んだりアニメを見てくれたら、すごくいい子に育つよ♪って思っているので(笑)、世界中の方に作品に触れていただきたいんですよね。

出演者に求める高い水準と強いこだわり。唯一無二のステージへの挑戦は果てしない

お二人を見ていると、まるで『ONE PIECE』が好きで好きでたまらない子どものように表情がキラキラしている。そこまで彼らを駆り立てる『ONE PIECE』の魅力とは何なのだろう。

田中 ジャンプで連載が始まった時から面白いと思っていたので、当時から自分に音楽の話がこないかなと思っていました。私は昔から“壮大なもの”が好きなんです。アニメの世界に入ったのもそういう壮大なものを書きたかったからで、『ONE PIECE』ではそれが書けると思ったんですよね。「海賊王になるんだ!」という曲を一番最初に書いたんですが、大海原に漕ぎだすぞ!というワクワク感がいいですよね。

金谷 私は“今見るべきエンターテイメント”として何を題材にしたらいいかを考えていた時に「この漫画凄い!」と思ったんです。一人ひとりの個性と、一人ひとりの目標とがあるし、仲間同士がお互いを信頼してベタベタと助け合わずに、みんながそれぞれのことをやっているというのが凄くいいなあと思ったんです。あと、決して道徳的でもない点もいいなと。教訓ばかりではないのに、物語から学べることがたくさん出てくるし、ルフィも「(海賊王に)なる!」と宣言していますが、その宣言することが一番凄いことだと思っているので、そういうことが伝わる重要な漫画だと思っています。

少しずつ公演の内容が明らかになるにつれ、気になるのが今回の公演に出演する役者陣やミュージシャンたち。一体どんな基準で選ばれたメンバーなのだろう。

金谷 演奏者は演奏経験がないとダメ。演者はその役にあった身体能力の持ち主であることと、あと似ていないのはダメですね。実際に女性は厳しい目で見るじゃないですか(笑)。能力と容姿、あとは一目惚れができない役者はダメだと思っているので、一目惚れできる役者を選んだつもりです。舞台の上では人柄までが出てしまうものなので、考え方とか中身がキャラクターに近い人にお願いしました。イメージがちょっとでも違ったら嫌なんです。例えばサンジがO脚だったりしたら女性は許さないですよね(笑)。マイナスの要素を入れたくないんです。一人ひとりの顔の特徴がアニメに似ていること、さらにアニメのキャラクターの顔がバラエティに富んでいるので、そのバラエティにふさわしい人をお願いしています。

こ、細かい・・・金谷氏のこだわりの強さに感服してしまう。

金谷 あとは、自分がなりたいと思わないと、私がいくら形を教えたところでダメなんです。カッコよさやポーズとか、尾田先生が考えられたそれぞれの形をどれだけ狂いなくカッコよく見せられるかというのがとても重要だと思っています。

これ以上にない完璧な布陣となるようだ。もはや期待しか生まれない。

金谷 今回はシンプルなセットの組み合わせでいろいろなものを表現していくことを考えています。今回の主役は“音楽”にしたいので、演奏にフォーカスがいくような形にしたいと思っています。あとは田中先生がおっしゃっていた“人がやる凄さ”が見えてきたらいいなと思うんです。セットとかでシーンを作り込まずに、今回は演奏者たちがよく見えるようにしたいですね。

ステージ上の様子が想像できる。徐々に「ワンピース音宴 イーストブルー編」の世界が明らかになってきたところで、最後に皆さんへのメッセージをいただいた。

金谷 『ONE PIECE』の物語が持っている冒険や挑戦というのが、まさに私たちが今この公演で直面している状況で、必ず皆さんの心がワクワクするようなものにしていきたいと思いますので、ぜひ劇場に来ていただけたらと思っております。

田中 コミック、映画、テレビ、歌舞伎にまで広がった『ONE PIECE』の世界が、今度はこのブラスパフォーマンスとして新たに誕生します。これまでの『ONE PIECE』とは全く違った味わい方を体験していただけると思いますので、身体と耳と、全身でぜひ体験してください。

最後に、この「ワンピース音宴 イーストブルー編」は2部仕立てであることも明かされた。2部では名曲の数々をノリノリでやりたい!とのことで、キャラクターたちは観客の近くまで降りていき、一緒に盛り上がって“音の宴”をたっぷり楽しめる、一緒に騒げる感じにしたいとのことだ。こちらも大いに期待したい。

音の宴を楽しみながら、同時に『ONE PIECE』の世界をたっぷり味わえる「ワンピース音宴 イーストブルー編」。『ONE PIECE』を知っている人、ファンの方はもちろんだが、そうではない人たちも確実に楽しめることだろう。ぜひ劇場に足を運んで、その耳、その目で新しいエンターテイメントを目撃してみてはいかがだろうか。

「ワンピース音宴 イーストブルー編」は、8/12(日)から9/2(日)まで、東京国際フォーラム ホールCにて上演される。

取材・文・写真/ローソンチケット


 

ワンピース音宴 イーストブルー編

2018/8/12(日)~9/2(日) 東京国際フォーラム ホールC

プレリクエスト先着先行
受付期間:4/5(木)12:00~4/19(木)18:00
一般発売
4/21(土)10:00~

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