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『ヘッダ・ガブラー』
高名な将軍の娘で、美貌と才気に恵まれた女性ヘッダ。思いのままに人を操り、
すべてを手に入れたかに見える彼女だったが、実は現状への不満や不安、言いようのない焦燥感にかられ…。彼女は「稀代の悪女」なのか、時代に抗った「新しい女」なのか!?
19世紀末にイプセンが放った衝撃の女性像に、最強カンパニーが総力で挑む!
【STORY】
高名なガブラー将軍の娘で美しく気位が高いヘッダ(寺島しのぶ)は、社交界でも話題の中心にいて、いつも男たちに崇められる魅力的な存在だった。しかし、頼りの父親が世を去り、ヘッダは周りの男たちの中から、将来を嘱望されている文化史専攻の学者イェルゲン・テスマン(小日向文世)を選び、世の女性たちと同じように、結婚する道を選んだ。
この物語は、二人が半年の長い新婚旅行から帰ってきた翌朝から幕をあける。
新居には、イェルゲンの叔母ミス・テスマン(佐藤直子)とメイドのベルテ(福田裕子)が二人を待っていた。彼らに思いやりを示すイェルゲンに対し、新妻ヘッダは、自分が強く望んで購入させたにも関わらず、新居への不満を並べ、すでにこの結婚に退屈している様子を隠そうともしない。
そこへ、昔からの知り合いであるエルヴステード夫人(水野美紀)が訪ねてきた。今は田舎の名士の後妻となった彼女だが、義理の子供たちの家庭教師だったエイレルト・レェーヴボルク(池田成志)を探しに街にやって来たのだという。レェーヴボルクとは、イェルゲンのライバルであった研究者で、一時期、自堕落な生活で再起不能と言われたが、田舎町で再起。最近出版した論文が大きな評判をとっている男だった。
そのレェーヴボルクこそ、ヘッダのかつての恋人だった。しかし、彼のヘッダへの執着がエスカレートすることに対し、ゴシップのネタにされることを恐れたヘッダが、拳銃で彼を脅して一方的に関係を断ち切ったという過去があった。ヘッダとの関係を知らないエルヴステード夫人は、彼を再起させるために論文執筆にも協力したことを語り出し、都会に戻った彼が、また昔の自堕落な暮らしに戻ることを恐れ、追いかけてきたという。そして、もう夫の元には戻らない覚悟を決めていた。また、ライバルであったイェルゲンもレェーヴボルクの才能は高く評価していたと、その再起を喜んでいた。そんな二人の純粋な思いを前に、苛立ちを覚えるヘッダ。そこに、夫婦が懇意にしているブラック判事(段田安則)が訪ねてくる。判事から、イェルゲンが有力と言われていた大学教授の候補に、レェーヴボルクも復活してきたことを聞かされたヘッダの心中は大きくざわつき始める。
ブラック判事と二人になったヘッダは、いかにこの結婚や毎日の暮らしが退屈か、このまま子供を生んで平凡な母親になることだけは嫌だと激白する。ヘッダに気があるブラックは、このまま見せかけの結婚生活を送りながら、気ままに浮気を楽しめばいいと、それとなく誘うが、そんな自分にはなりたくないと断るヘッダ。
やがて、レェーヴボルクが現われた。久々に対面し、まだ互いに惹かれ合っていることを感じ合う二人。
しかし、エルヴステード夫人とそこで会えたことを素直に喜ぶレェーヴボルクの姿を見て嫉妬したヘッダは、まだ自分に彼を操る力があるかを試すために、酒の席を避けて更正していた彼を言葉巧みに、ブラック判事主催のパーティへと送り出してしまう。
案の定、酒の力で自分を見失ったレェーヴボルク。あろうことか、大事に持ち歩いていた次回出版予定の原稿を紛失してしまう。原稿は、たまたまイェルゲンが拾い、ヘッダに託したのだが、ヘッダはそれを戸棚に隠してしまう。
そこに落ち込んだレェーヴボルクが憔悴しきった姿で現われるが、ヘッダは、隠した原稿を出そうともしない。
そして、レェーヴボルクに自分が大切にしていた父の形見を手渡し、ある言葉を彼に囁く・・・・。そして・・・・。
作:ヘンリック・イプセン
翻訳:徐 賀世子
演出:栗山民也
キャスト:
寺島しのぶ 小日向文世 池田成志 水野美紀 佐藤直子 福井裕子 段田安則
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寺島しのぶ ヘッダ・テスマン(旧姓:ガブラー)
社交界の花形だったが、イェルゲン・テスマンと結婚。テスマン家から望んでいない妊娠を期待されることにも
辟易している。イプセンは、戯曲のタイトルを結婚後の名前「ヘッダ・テスマン」ではなく、あえて、旧姓「ヘッダ・ガブラー」とした。「夫の妻」ではなく、「将軍である父の娘」という彼女のパーソナリティを表した、と語っている。
小日向文世 イェルゲン・テスマン
真面目で著名な学者で将来を期待されている。憧れの存在ヘッダと念願かなって結婚。実は苦労人で、
早いうちに両親を亡くし、叔母の支援で生きてきたことに心から感謝している。教授職就任のライバルとして
復活してきたレェーヴボルクの才能に一瞬焦りを感じるが、その内容に心からの敬意を抱いている。
池田成志 エイレルト・レェーヴボルク
ヘッダの昔の恋人。イェルゲンと同じく研究者だったが、酒と女に溺れ、キャリアを台無しにしてしまう。
ヘッダは、彼の豪快で想像力あふれる話を聞くのが好きだったが、ヘッダへの思いが執着へと変わり始めた
彼に恐れを感じたヘッダに銃に脅され、一方的に関係を断ち切られる。
水野美紀 エルヴステード夫人
ヘッダの学校の後輩で旧名テーア・リーシング。イェルゲンとも旧知の間柄。田舎の名士エルヴステード家
の家庭教師から後妻に入り、生徒の継母となる。新任の家庭教師としてやってきたレェーヴボルクを愛して
しまい、彼の執筆にも献身的に協力。共同で本を書き上げ、復活に尽力する。
佐藤直子 ミス・テスマン(ユリアーネ)
死んだ兄の息子イェルゲンを支援することに一生を捧げてきたイェルゲンの叔母。独身。ひたすらイェルゲンの
幸福だけを願っている。ここ数年は、寝たきりの妹リーナの介護もしている。自分の年金を抵当に入れてまで、
イェルゲンの新居の家具などを調達した。イェルゲンの喜ぶ顔を見るのを楽しみにしている。
福井裕子 ベルテ(テスマン家のメイド)
もともとは、ミス・テスマンの家のメイドとして働いていたが、イェルゲンの結婚を気に、ミス・テスマンの指示でイェルゲンの新居のメイドとなる。新妻ヘッダが、もともとは将軍家で何不自由ない生活に慣れていることで、ヘッダの気に入るように世話ができるのかを、とても心配している。
段田安則 ブラック判事
ヘッダと同じ上流階級に属する上品な紳士で街の有力者。仕事柄、顔が広く社交家で独身主義。イェルゲン、
ヘッダとも旧知の仲だが、実はヘッダに気がある。退屈と絶望から追い詰められたヘッダがとった行動を見抜き、それをネタに、彼の恋心は歪んだ形でヘッダの目の前に突きつけられる・・・。