コンサート
小曽根真 ピアノ ソロ クラシック×ジャズ2018

小曽根真 ピアノ ソロ クラシック×ジャズ2018
© photo by Kishin Shinoyama

小曽根真 ピアノソロ“クラシック×ジャズ”2018開催!「小曽根真」来福記者会見レポート

小曽根真

世界的なジャズ・ピアニストとしての活躍はもちろん、近年はクラシックにも本格的に取り組み、幅広い活躍で世界中でも高い評価を得ている小曽根真。そんな彼がトロンボーン奏者の中川英二郎をスペシャルゲストに迎え、いよいよ11月29日、福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)にてクラシックとジャズとのコラボ公演を開催。公演まで残すところわずかとなった。

その公演のキャンペーンで来福した小曽根真が取材会を行い、ジャズやクラシックとの出会いから、コラボに対する思いなどを熱く語ってくれた。

――クラシック音楽との出会いからジャズとの融合まで

「5歳の頃、母親の勧めでピアノを習い始めたことでクラシックと出会うんですが、バイエル(ピアノの導入教材)でピアノもクラシックも嫌いになったんです(笑)。でも、12歳の時に叔父が行くはずだったジャズピアニスト“オスカー・ピーターソン”のコンサートへ行くことになり、その時に『ピアノでジャズを弾いていいんだ』と認識してからピアニストになる決心をしたんです。その後デビューすることになって、作曲家としてクラシックを参考に聴くようになりました」

子どもの頃のひょんなきっかけから、一度は嫌いになったピアノを職業とする道を選んだ彼は、ジャズピアノ奏者を目指しバークレー音大ジャズ作・編曲科を首席で卒業した後に、ジャズピアノ演奏家としてデビューを果たすことに。

そして、2003年の札幌交響楽団との共演で、初めてクラシックとコラボをすることになるのだが、札幌交響楽団との初共演で想定外の出来事が…

「札幌交響楽団との公演は、その公演のコンダクター・尾高さんが私の演奏するラプソディ・イン・ブルーを気に入ってくれているということを以前から耳にして知っていたので、それならば! と共演を引き受けたんです。その数ヵ月後、当時のマネージャーに『演奏曲はラプソディ・イン・ブルーだと思うけど、念のため確かめておいて』と伝えたら、マネージャーからスグに『モーツァルトの曲を! と言われています。何番を演奏するかも小曽根さんに選んで欲しいそうです』と連絡が来まして…。モーツァルトなんて弾けないですから、『マジ!?』と思いながらも(笑)、キャンセルなんて出来ないですし、すぐにモーツァルトのコンチェルト(協奏曲)全集27曲分を買いに行きました。それを10日間で(1曲30分程の曲を)全曲聴いて“9番”を選んだんです。そして実際に緊張しながらも公演で弾いたわけですが、その演奏が非常に良かったと尾高先生がいろんな場所でおっしゃってくださったおかげで、そこからクラシック界からのオファーが来るようになったんですよ」

その共演以降、クラシックに携わる人たちがどういう風に音楽を作っているのかを知りたいと思ったという小曽根は、2004年に4ヶ月ほどクラシックを学びに留学を決めたという。今では、小曽根が年間に開催するコンサートの1/4が、定期演奏会と称したクラシックとのコラボ共演をしているそうだが、なぜクラシックに惹かれていったのか気になるところ…

「ジャズは“即興”でやる音楽で、日常会話のように音楽を自分の“言葉”としてピアノで表現するようなもの。でも当時の僕は、クラシックはそれとは違うと勘違いしていたんです。『なぜ人が書いたものを(そのとおり)弾かなきゃならない?』っていう気持ちがあったんですね。でも実際に弾いてみたら、クラシックの場合はジャズと違ってきちんと決められた譜面や弾く音が与えられている分、その中のもっと深いところで自分を表現していくことが出来るものなんだということを見つけたんです。だから、自分の解釈で昨日と今日では同じ音を弾いても違ってくる…これこそが音楽なんだ! とクラシック音楽に教えられました。私は音楽を言語だと思っているので、人に伝えることが出来ないと音楽には意味がない。ジャズはアメリカから、クラシックはヨーロッパから生まれたものですが、その数多くの言語を使って演奏することの楽しさをクラシックにも見つけてしまったといいますか、そこから僕は正直言ってクラシックにハマっていったんです」

――ジャズとクラシックの共演が生み出すものとは

「僕はあまり形にこだわらないんです。僕がクラシックにハマってしまったのは『生きていることのJOY(喜び)』を感じたから。僕にとってジャズも、生きている瞬間を表現することで皆と共有できる喜びを得られるもの…なんです。何もないところから、『一期一会』のように二度と表現できないものをやるのがジャズです。それを楽譜に起こして皆が演奏できるような形態にしたものがクラシックだと思うんですよね。“クラシック”という言葉ではありますが、時間の経過で歴史が出来たから“クラシック(古典音楽)”になっただけ。当時モーツァルトの曲はポップスだったとも言われていますからね。クラシックのように歴史と伝統が出来てきて形が完成したものは尊いものですが、それがあることによってボーダーが出来てしまう。それは本来アーティストに一番必要ないもの。だからといってなんでもやっていいかということではないですよ? 勉強していくことによって、どれだけ自由に出来るか? 皆さんが幸せになって帰ってもらえることや人とのつながり、共有できることが一番大切なこと。相手を幸せにしたいという気持ちを人は大事にしないとね。音楽も僕はそうありたいと思っています」

クラシックもジャズも、ジャンルの垣根を超え、人々に喜びを与えるという点に変わりはないことを熱く語ってくれた。では、そんな情熱を観客はどういった心構えで聴くべきだろうという問いかけには…

「ジャズもクラシックもいろんな聴き方をしてもらっていいと思うんです。とにかく演奏する側は聴いてくれる方を“HAPPY”な気持ちにさせたいんです。(ジャンルの)ボーダーを越えてやっていくことの意味とは、聴いた人が豊かな気持ちになってもらうことだと思っているので。それには自分自身が演奏していて“HAPPY”を感じていないとダメ。そのためには勉強もして練習もしていないと“HAPPY”にはなれない。『出来ないことは宝物』だと思っています。だからあえて怖いところ、クラシックというジャンルにも足を踏み込んでいるんです。コンサートで失敗するかもしれない…。でも、恐れることはない。大事なのは結果に向かって練習して試行錯誤して、皆で悩んで…。そのプロセスのエネルギーがコンサートに出せれば、音楽を超えて、そのエネルギーを皆さんに届けられる。芸術ってそんなミラクルを持っているものだと思いますし、芸術は高尚なものになって欲しくない。身近なものであって欲しいんです」

『失敗は恐れない』という小曽根だが、長い間『クラシック×ジャズ』共演を続ける中で、いまだに彼は“怖いところ”へ行っている…と語る。その真意は?

「クラシックのコンチェルトは弾くたびに難しく…怖くなるんです。N響さんとの共演後にその話をクラシックをされている方に聞いたら、『それはね、君にもっと欲が出てきているから。1回目はただ譜面を必死に弾く。2回目以降は次はこう弾きたい、上を目指したいという“欲”が出るからだよ』ということを言われたんです。だから余計に皆さんが知っているクラシック曲をジャズ奏者なりに弾くという怖さ…。ミスしたらどうしようという怖さもありますね。そこはジャズにはない部分です。だからクラシックの時は怖さも含め、そこにこの奏者はどう立ち向かっていくのかをお客さんも見たいと思ってお金を払って来てくれていると思うんですよね。それに応えるべく、自分の精一杯を出したいと思っています」

世界的ジャズピアニストによる一夜限りのクラシックとの共演は、観客の私たちにどういった“JOY”を与えてくれるのか楽しみでならない。JOYを体感しに気負いすることなく会場へ足を運んで頂きたい。

取材・文・写真/島田聖子(ローソンチケット)

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