【インタビュー】柴咲コウ

2023/11/15(水)

“現在・過去・未来”の時空を駆け巡るような演出にしたい

今年7月に芸能活動25周年を迎えた柴咲コウが昨年からの音楽活動20周年のアニバーサリーイヤーを締め括る記念碑的アルバム『ACTORʼS THE BEST ～Melodies of Screens～』をリリースする。

「1998年から芸能活動をしてきて、今年25年というところで、これまでの作品を振り返るという意味合いと、2002年に歌手デビューし、昨年から20周年の節目を迎え、歌い続けられたこと。この2つができること、続けてこられたことを、きちんと形にしたいと思いました」

今作では、彼女が俳優として出演してきた映画『バトル・ロワイヤル』やドラマ「オレンジデイズ」「Dr.コトー診療所」などの主題歌や挿入歌をカバー。さらに、RUI「月のしずく」や福山雅治とのユニットKOH+「最愛」「ヒトツボシ」など、自身が歌ってきた主題歌や挿入歌も織り交ぜている。これまでの彼女は、「自分の思いを自分の言葉で歌う」音楽活動と、与えられた役柄を全うし、時にはその役として歌う俳優業をどこか分けて考えているように感じていたのだが、何か心境の変化はあったのだろうか。

「今となっては個性と扱われるものも、自分の中でも混ざらないように、という思いがありました。当時は、変な先入観にもなりかねないと思っていたからでしょうか。自分の中でも自己表現の場である“歌うこと”というアーティスト活動と、俳優としての比重がどうなれば心地いいか、探っていたところもあります。今はそれぞれが自分の中で溶け合って新たな価値観を持ち始めている。そんな感じです」

映像と音楽、芝居と歌の循環の集大成となった本作の中で特筆すべきは、彼女が書評を書いたことがきっかけで大ベストセラーとなり、2000年代前半に“セカチューブーム”を巻き起こした「世界の中心で、愛をさけぶ」だろうか。俳優としての彼女は、映画版で大人になった朔太郎の恋人、律子を演じていた。

「当時、平井さんが映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌を歌われ、私はドラマのセカチューの主題歌『かたち あるもの』を歌わせていただきました。同じ原作だとしても、異なる俳優・作りであるわけで、2つの作品が混ざらぬよう、なるべく『瞳をとじて』に触れないようにしていました。
今回はあらためて“俳優として、歌い手として”この曲に向き合った。そんな気分で歌入れしました。
それ以外の曲に関しても、純粋に“歌いたい”という直感的な思ったことを大切にしました。聴いている方にも『あーこんな作品にも出演していたな』と回顧してもらい、ご自身の当時のことを振り返るきっかけにもなるような曲を、と思い選んでいます。
また、その年代その年代を堪能してもらいたいという思いから、リリース順に並べています。まあ、当然“現在”の私が“現代”のアレンジで歌うので、リリースが20年前だとしても全く新しい曲へと昇華しています。 自身の曲はあえて歌い直しをしておらず、歌い方含め、その時代を堪能してもらえればと思います」

そして、12月からは、実に4年半ぶりとなるコンサートツアーがスタートする。

「『良いものは新しくなれる。』楽曲の美しさとともに、当時の情景が思い浮かぶような、聴いている方が浸れるような、それでいて刺激もあるような印象的なLIVEにしたいですし、“現在・過去・未来”、それらの時空を駆け巡るような演出にしたいと考えています。
今まで柴咲コウのLIVEに来たことがある方も、まだの方も、今回はどんな方にも浸透しやすい曲のラインナップと構成になると思います。それぞれの人生に思いを馳せながら、前を向いて歩いて行きたくなるようなLIVE空間にしたいと思っていますのでぜひ、会場に足をお運びください！」