【インタビュー】INSPi

2023/5/15(月)

INSPi

史上最大の曲数にチャレンジするINSPiの原動力は「他者とのつながり」

アカペラグループ・INSPi恒例夏のツアー。今年のタイトルは「Sing A Lot」と、明快により多くの歌を楽しんでほしいとの思いをこめたものだ。
昨年はデビュー時に続けていたシリーズ名「INSPi Cafe」を復刻し、カフェでお喋りをするようなコミュニケーションをコンセプトに、リーダーの杉田篤史がMCで各メンバーをインタビューし、そのパーソナルな面を味わってもらった。それが好評で、ファンにとってのINSPiは音楽を聴くだけでなくメンバー一人ひとりの人生と一緒に歩んでくれているんだと実感できたという。

杉田「それもあって今回は逆に振り切り、MCをコンパクトにしてよりたくさんの曲を聴いていただき、歌を通じて僕らを伝えたいと思ったんです。通常のライブでは15曲ぐらい…過去最高で20曲は歌ったと思うんですけど、今回はそれを超えて通常の1.5倍は歌うつもりでいます」

単純に曲目を増やすといってもアカペラはすべてが人力であり、喉の体力がなければ不可能。一昨年に20周年を迎えた全員四十代のメンバーにとっては、チャレンジと言っていい。
その原動力となるのは個々の活動を並行し、そこで培ったアイデアをフィードバックすること。それぞれのフィールドで充実しながら「集まった時にみんながいい顔をしていて、家族の幸せを見るような気持ちになれる」と杉田が言うように、この場所だからこそ得られる歓びがある。
その杉田はここ数年、他者との関わりの中で作品を生み出してきた。愛媛県野村町と神奈川県逗子市の二拠点活動を始め、大阪府茨木市民の皆さんと唄を作り、逗子高と逗葉高の合併により新設された逗子葉山高校の校歌はワークショップを重ね生徒たちと作詞・作曲した。
個が源となるアーティストが多い中、このスタンスは実に興味深い。校歌にしても「作詞・作曲 杉田篤史」の形でやることもできたはずなのに、生徒たちとの共同作業を望んだ。デビュー当時はメンバーとの共作ですら「本当なら自分一人で生み出せたらいいのに」と思っていたほどだったが、それを思い起こすと恥ずかしくなるのだという。

杉田「INSPiとして歩む中で、個で生み出せるものはある意味タカが知れていると思うようになっていきました。他者の間に生まれるものの方が新鮮な驚きと感動がたくさんある。野村で生活するようになったのも地域全体が家族のようだったからで、人と人がちゃんとつながれて、人の幸せってこういうことなんだと思ったんです。校歌も自分一人でやっていたら生徒の皆さん、学校の先生方、卒業生の方々に『こんないい校歌をありがとうございます』と言ってもらえていなかった」

こうした考えは、他者とハモることで成り立つアカペラを続けてきたことが大きかった。そしてオーディエンスはライブを通じ、メンバー同士のつながりや自分ともつながっていることを感じるために足を運ぶ…そんな関係性を築けるのが、INSPiという場なのだ。

杉田「人が集まって一緒に何かをやるというのは素晴らしい行為です。人間は一人で生きていけないぐらい弱いからこそ、協力することで生き延びてきた。困った時には助け合える存在がいることの安心感もあるし、家族が安心して暮らしているのを見ると幸せな気持ちになれる。そういう意味で今のINSPiは人間としての歓び、幸せを感じられる場になっていますね」

プロフィール

INSPi/いんすぴ

2001年メジャーデビューの6人組アカペラグループ。メンバーは北剛彦、大倉智之、杉田篤史、奥村伸二、吉田圭介、渡邉崇文。

公演情報

Sing A Lot

  • 6/18(日)15:00 東京・表参道GROUND
  • 6/18(日)18:30 東京・表参道GROUND
  • 7/1(土)14:00 愛知・CLUB SARU
  • 7/1(土)17:30 愛知・CLUB SARU
  • 7/2(日)14:00 大阪・ROCKTOWN
  • 7/2(日)17:30 大阪・ROCKTOWN

インタビュー・文/鈴木健.txt
構成/月刊ローチケ編集部 5月15日号より転載

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