【インタビュー】INSPi

2022/11/15(火)

INSPi

地球とハモる経験を得て……調和の中に人間ならではの"整わない妙"

アカペラグループとしての活動と並行し、メンバーがそれぞれのフィールドで経験したものを音楽制作に生かしているINSPi。リーダー・杉田篤史は、この8月より神奈川県の逗子と愛媛県西予市野村町での二拠点生活をスタートさせた。
ハーモニーからコミュニケーションを考える「ハモニケーション」を始め、学術的にその効果を証明するべく愛媛大学での研究を始めた2018年、豪雨による甚大な被害を受けた野村町を訪れた杉田は「音楽で地元の人たちの支えになることはできないか」と思い立ち、ワークショップを通じて一緒に歌を作ってきた。そうしたふれあいの中、この地へ秘められた可能性に魅入られ現地の古民家を借りて活動するにいたる。 
この思い切った決断に当初は驚いていたメンバーも意図を理解し、さる10月30日にはINSPiとして「のむら里の風芸術祭」に出演。海外公演も経験し、大きな規模の中でバンドを続けてきた 彼らが、地域密着というミニマムな活動に帰結したのは、コロナによって都市からの文化を届けづらくなったり祭りごとを開催できなくなったりしている今だからこそ、深い意義がある。

「これらの活動が町のためになって、さらに僕にとっても音楽活動の幅が広がり、音楽以外でも愛媛大客員研究員として学術的な研究をそこでしていって、それがハモラボ(杉田が経営する会社)での活動につながり、ハモラボでの活動が音楽活動につながって全部がサイクルになる。人生においての仕事としてつながっていっているかんじです」

地元の猟師の誘いで、杉田は以前から関心があった狩猟に立ち会い〝解体〟を実体験し、ムキ出しの生と向き合った。ミュージシャンとしては稀有な機会だが、それが野村町の日常。
日中は青空を眺め、夜になると縁側で月を見上げながら酒をあおる。そのうち、自分という生き物と自然が同化していく感覚に見舞われる。それはいわば、地球とのハーモニーのようなものだ。

「地球とハモれるのはいいものです。踏ん張って身を守ろうと頑なになっていたものが、ほぐれていく感覚がすごく心地いい。アカペラで表現する上で〝自然〟というのは大きなキーですよね。脳みその中で組み立てる合理的なものがある一方、感情的な叫びも出てくるのが歌だし、僕はアカペラのそういう部分が好きで、どうやっても整いようがないところがいいなと思うんです。一生懸命ハモろうとしてもハモりきれずにもがいている、そこに何か共感できるんですよね」

デジタルでは表現できぬ、人間ならではのズレだからこそ生じるグルーヴ感が音楽にはある。調和の手段であるアカペラの中で整わない部分を求める逆説的な価値の見いだし方も、野村町という環境を得たからこそ再認識させられた気づきであろう。
12月のライブは、3日にリリースされるミニアルバム『星雲』収録のオリジナル曲と、80~90年代のJ-POPによるクリスマスソングがフィーチャリングされる。「まだ、音にちょっとずつ曖昧な部分があった頃」のナンバーを、アカペラで表現することでの妙が味わえるに違いない。

「INSPiという場所があるからこそ、一人の時はもっと冒険してもいいかもと、もう一歩外に踏み出せている気がします。21年目のINSPiのチャレンジと、その中で得たものをそれぞれが集めて持ってくる場所になると思いますので、楽しみにしてください」

プロフィール

インスピ

2001年メジャーデビューの6人組アカペラグループ。メンバーは北剛彦、大倉智之、杉田篤史、奥村伸二、吉田圭介、渡邉崇文。

公演情報

Oh! Christmas2022 ~インスピサンタのJ-POPクリスマス~

  • 12/11(日)15:00/18:00 東京・表参道GROUND

インタビュー・文/鈴木健.txt
構成/月刊ローチケ編集部11月15日号より転載

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