【インタビュー】チバユウスケ(The Birthday)[FUJI ROCK FESTIVAL'21]
希望を歌い続けるロックの伝説、チバユウスケが今再びのフジロックへ
チバユウスケが、フジロックにおける、もっとも重要なミュージシャンの一人であることは間違いないだろう。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTでの1998年の第2回(会場は東京・豊洲)を皮切りに、ROSSO、The Birthday、THE GOLDEN WET FINGERSなどで出演。DJやセッションを含め15回以上も登場している。
「98年のこと? もちろん覚えてるよ。ライブ中に何度か中断したんだよね。前のほうの客が大暴れして。俺らも若かったし、当時は洋楽至上主義みたいな雰囲気もあったから、“ぶっ潰してやる”なんて思ってたんだけど(笑)、やってみたらめちゃくちゃ盛り上がったし、関係なかったね」
そして00年にはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTで苗場のGREEN STAGE(メインステージ)ヘッドライナーを務めた。1997年~2019年までのフジロックでヘッドライナーを張った日本のバンドは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとBLANKEY JET CITYだけだ。
「“日本のバンドとしては最初のヘッドライナー”って聞いてたんだけど、俺らの前日(2000年7月28日)にBLANKEY JET CITYが先にやったんだよね。“なんだよ”って思ったんだけど(笑)、ブランキーのライブ、最高だったよ。俺はステージの袖で観てたんだけど、楽しくなっちゃって。だいぶ酒を飲んだね、あのときも」
The Birthdayとしては2008年、キャンセルとなった忌野清志郎の代打として急遽2ステージを任されるなど、数々の伝説的なライブを繰り広げてきた。もちろんチバ自身も、フジロックに対しては強い思い入れがあるという。
「ずっと出させてもらってるし、苗場に行くたびに“いいな”と思うね。自分のライブが終わると、知り合いが出してる店でずっと飲んでるんだけど(笑)、それも楽しいし。印象的なライブは、The Stone Rosesかな。もともと好きだったんだけど、あのときのライブはレコードとまったく同じアレンジで演奏してて、すげえなと。イアン・ブラウンのピッチもバッチリだったし、すごくよかった。ニール・ヤングも覚えてるよ。離れた場所で飲みながら聴いてたんだけど。あとね、フジロックってステージとステージが離れてるじゃない?(アーティスト用の)裏の導線で移動してて、迷子になったことあるよ(笑)」
フジロックが中止となった2020年、The Birthdayはシングル「ヒマワリ/オルゴール」を発表。11月には東名阪のホールツアーを開催するなど、コロナ禍に置いても果敢に活動を継続してきた。そして2021年にはニューアルバム「サンバースト」をリリース。ダークな爆音が響き渡り、<ああ俺は今夜 とぶことにした>というラインが突き刺さる「12月2日」、心地よい疾走感をたたえたバンド・グルーヴ、叙情性と解放感を共存させたメロディが聴く者の心と体を高揚させる「レボルバー」、80年代ハードコア・パンクを想起させる「ショートカットのあの娘」など、ロックンロールの奥深い魅力を存分に体感できる作品だ。
「(制作期間が長かった影響で)その間に自分のなかの流行りみたいなのものも変わって。それが(曲調の幅広さに)出てるのかもね。『ショートカットのあの娘』は、自粛期間中にエクスプロイテッドやG.B.H(どちらも80年代ハードコアを代表するバンド)を聴いてたせいかな(笑)。2020年の気分がアルバムに出てるかどうかは、今はわかんないね。それこそツアーでもやって、1年くらい経たないと、あの頃、どんなことを考えてたかなんてわからないよ」
<生きてる 生きてよ そう聞こえた気がした>(「息もできない」)、<神様のなれの果て/いつだって音が踊る>(「アンチェイン」)など、詩的にして鋭利なチバの歌詞も素晴らしい。なかでも強烈なのは、「お前の想像力が現実をひっくり返すんだ」というフレーズだ。
「たとえば音楽を聴いて何かを思い浮かべるのもそうだし、<天気いいから、布団干そうかな>とか(笑)、現実的なことに対して<こういう状況になったら、どうするか>と考えたり。バンドのことで言えば、<この曲をThe Birthdayに持っていったら、こうなるだろうな>ってイメージしたりね。そういう想像力って大事な気がするけどね」
アルバムタイトルの「サンバースト」は本来、雲間から急に日が差すことを表わす言葉。聴き終わったときに感じる未来への確かな希望こそが、本作のもっとも大きな魅力だろう。
「ずっと希望を歌ってるつもりなんだけどね、俺は。このアルバムもそうだけど、絶望だけの歌はないんじゃないかな」
そしてThe Birthdayは今年のフジロックの2日目(8月21日)のWHITE STAGEに出演。新作「サンバースト」を引っ提げて登場する3年ぶりの苗場でも彼らは、最強のロックンロールを響かせてくれるはずだ。
「フジロックでやれるのはもちろん楽しみだよ。フジが好きな連中は、ラインナップよりも、あの場所で音楽を聴くのが好きなんだろうし。今年もカッコいいバンド、たくさん出るしね。俺が観たいのは、同じ日に出るTHE SKA FLAMESやAJICOとか。3日目のTHA BLUE HERBも観たいね。(マスク着用、観客数の制限など)いろいろ強いてるのは悪いなと思うけど、楽しんでほしいね」
プロフィール
ザ バースディ
2005年9月結成。メンバーはチバユウスケ(Vo&G)、フジイケンジ(G)、クハラカズユキ(Dr)、ヒライハルキ(B)。7/28(水)に11th ALBUM「サンバースト」をリリース。
公演情報
FUJI ROCK FESTIVAL'21
8/20(金)~22(日) 新潟・苗場スキー場
★The Birthdayは8/21(土)に出演、またチバユウスケは8/22(日)忌野清志郎 Rock'n'Roll FOREVERにも出演
国内最大級の野外ロックフェス「フジロックフェスティバル '21」開催!
今年は海外からのアーティストの出演はなく、国内アーティストのみが出演する「特別なフジロック」。
注目のヘッドライナーは、初日8/20(金)がRADWIMPS、8/21(土)はKing Gnu、そして最終日8/22(日)は電気グルーヴ!
他にもmillennium parade、METAFIVE(高橋幸宏×小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井)、CORNELIUS、NUMBER GIRL、平沢進+会人(EJIN)、秋山黄色など、豪華アーティストが出演!
※公演が中止・延期になる可能性がございますので詳細は各公演の公式HPをご確認ください。
[FUJI ROCK FESTIVAL'21 公式HP]https://www.fujirockfestival.com/
リリース情報
「サンバースト」
2021/7/28(水)発売
Universal Sigma/初回限定盤6,300円(税込)
※Blu-ray Disc付き
▼【先着特典】ステッカー
インタビュー・文/森朋之