| 2003年に上演され、演劇界に衝撃をもたらした話題作が再演される。マーティン・マクドナー作のブラックでスタイリッシュな物語を、現実世界に置き換えるのは、もはや説明の必要はないであろう稀代の演出家・長塚圭史。アイルランドで1匹の猫の無残な死によって幕を開ける悲しくともコミカルな物語を、高岡蒼甫をはじめとする豪華キャストがつむぎだしていく…。 |
●この作品では長塚さんと初めてご一緒にお仕事をされるとか?
「そうですね。今まで顔見知りではあったのですが、接点と呼べるほどのものはなかったんです。ただ、僕自身、長塚作品が好きだったので、よく劇場に通っていたんですよ。それで楽屋へ行ってご挨拶したりとか、違う舞台を観に行ったときに長塚さんも来られていて、お話させていただいたりとかはありましたね」
●今回の作品は、長塚さんから声をかけられたんですか?
「長塚さんなのか、パルコの毛利さん(プロデューサー)なのかわからないのですが、一緒に以前毛利さんとお仕事をしたことがあったので、そのつながりからもあったのかもしれないですね。実は、出演を決めかねていたんです。長塚さんとは一緒に仕事がしたかったんですけど、“題材的に自分にこなせるのだろうか?”という覚悟を決めるまでに少し時間がかかったんです」
●どうして悩んでいたんですか?
「北村有起哉くんが初演にこの役を演じていたのですが、彼を超えることができるのであろうかって。そういうプレッシャーがあったんです。長塚さんは“決めかねているようだったら、直接会って話をする”と言ってくださったようなんですけど、“会ってお断りするのもな…”と、いろいろ葛藤をしていたんです(笑)。でも、最終的には、いいチャンスをいただいていることに間違いはないので、長塚さんと一緒にやってみようと思って。それと、実は僕、舞台に苦手意識があったんですよ。過去2回、舞台に立ってきましたけど、ある意味食べず嫌いな感じだったのかもしれません。今回はパルコ劇場だと聞いて、それも自分が立ち上がるきっかけになりました。いつかはやってみたい劇場だと思っていましたし、お客さんとして観に行く立場としても好きなハコだったので」 |
●では、今回、意を決めて望むとなってからは、どんどん楽しみなことが増えてきているのではないですか?
「それはもう、楽しみだらけですよ! 役だけで言っても、勢いを持たせられる役ですし、すごくエネルギーが注げる環境なので、僕に合っていそうですからね。まあ、僕が思い込んでいるだけかもしれませんけど(笑)。有起哉くんができなかったことを、僕ができるかもしれないって。今はやってやろうという気持ちがとても強いです」
●でも原作を呼んだときの感想は…少し違ったみたいですね。
「エグいと思いました。それと、(高岡演じるパドレイクが)バカだな!って(笑)。最後のオチも、“こいつらは何をやっているんだろうな?”と。最終的には猫のウィー・トーマスだけがハッピーで、でもブラックで、グレーなところもあって、それでですね…」
●あ、ネタバレにならない程度で(笑)。初読のイメージもふまえて、北村さんが初演で演じたパドレイクと、今回、高岡さんが演じるパドレイクではどう違いそうですか?
「僕、パドレイクの持つクレイジーさはよくわかるんですよ。だから逆に、そのクレイジーなところ意外の部分をより際立たせたいと思っています。常人から見て、理解しがたいほどのクレイジーさを持つ人でも、純粋だったり、優しいところがあったり、かわいいところがあったり、その人なりの価値観の中で必ずそういうものが存在するはずですから、稽古をしていく上でそこを作り込みたいですね」
●作品自体についてですが、残虐なところが割に淡々と描かれていますね。そういう世界の住人を生きる難しさはすごそうですが…。
「そうですね…少し話はずれるかもしれませんが、パドレイクはすごく猫を愛する役なんですよ。だから、猫が殺されたりするときに強い感情を匂わせるんですが、実は僕、猫があまり得意ではなくって(笑)」
●猫がダメ?
「犬ならOK(笑)。僕は犬を飼っていますので。茶色い犬です。でも、名前と犬種は秘密です(笑)。休みの時には、あまり街中には行かずに、犬を連れてどこかへ遊びに行ったりしていますね」
●でも、守るべき存在という部分では共通していますね。
「もちろん僕自身の観点から言っても、動物がいたぶられたりするシーンには心揺さぶられるものがありますから、まずは猫を好きになっていかなきゃ始まんないかなって思うんです。もちろん(インタビュー時点では)この作品がどうなるかは未知の世界ですので、いろいろ壁はあるんだろうなと思いますけどね」 |
●今回の共演者も前回に負けないぐらい素晴らしいキャストばかりですね。この中で、顔見知りな方はいらっしゃいますか?
「岡本綾ちゃんとはテレビでご一緒させていただいたことがありますね。あと、少路勇介さんは映画でちょこっとだけ一緒になりましたね。二人とも映像でですから舞台では初めてご一緒することになります。ほかの方は、いずれにせよ初めての方ばかりです。今のところは、思い切って自分を出していくということしか考えていませんね。舞台の経験が豊富なわけではないですけど、僕自身の個性というものを大事にしながらも、みなさんの胸を借りるつもりでやろうと。それだけです」
●では、最後に読者のみなさまに向けてメッセージをお願いします。
「心臓の弱い方はいらっしゃらないほうが…って違うか!(笑) でも、とにかく楽しいものにできるようにします」 |