'29年に小林多喜二が発表した小説『蟹工船』。劣悪な環境で働く労働者たちの闘争を描いた本作をSABU監督がスタイリッシュな映像とユーモアを交えた演出で映画化。その中でサディスティックかつ、圧倒的な支配力を持つ監督・浅川を演じた西島秀俊に話を聞いた。
停滞感を抱えた人たちに何らかの力を与えてくれる作品
●最初に『蟹工船』出演のオファーを聞いたときの心境を教えてください。
監督のSABUさんとは何年か前にお会いしていて、「一緒にやろう!」って言ってくださっていたんです。で、今回台本をいただいて読むと、すごくSABUさんらしい独特のユーモアがあり、“生きる”ということに強く向かっていくラストだったので。SABUさんの映画だなぁ、僕の好きな映画だなぁ、ぜひ参加させてもらいたいなと思いました。
●西島さん自身は“浅川”というキャラクターをどう捉えていますか?
これは初めから考えていたことではなく、撮影を進めていくうちにそうなったんですが、浅川はただ目の前にいる人たちに向けて暴力を振るい支配しているんじゃな
くて。“そんなことをやっている自分”とか“蟹工船というシステム”をどこかで理解しているというか、俯瞰の目で見ているキャラクターになったなと思います。
●完成した作品をご覧になった感想は?
実際に参加している僕が見ても、労働者の役をやっているそれぞれの役者さんたちがほんと素晴らしくて! ストーリーも分かっているし、すでにみんなの演技も見ているんだけど、素直に感動しましたね。見た人はみんなキャラクターの誰かに感情移入するんじゃないかなぁ。
●お気に入りのシーンは?
やっぱり労働者のみんなが立ち上がるシーンかな。あとSABUさんの映画なんで、面白いシーンもたくさんあるんですよ。
●最後にメッセージをお願いします。
普段生きていて、現状が厳しかったりとか、未来に希望を持てないとか、そういう状況の方がたくさんいらっしゃると思うんですね。年齢・性別関係なく、なんとなく停滞感を持っていたりして……。そういう人たちにも、見ていただければきっと「始めよう!
現状を破っていこう!」という力を与えられる映画だと思うんで。たくさんの方に劇場でお会いしたいなと思っています。
インタビュー・文●依知川亜希子 撮影●柴田ひろあき
スタイリング●藤井牧子 ヘアメイク●大橋 覚(VANESSA + embrasse)
SABU監督を中心に、団結力のある現場
個性的な俳優20人以上がひしめく『蟹工船』の現場。撮影中はどんな雰囲気だったのかを尋ねると……。「僕はちょっと役的に離れていたんですけど、ほかのみんなは合宿して、ずっと一緒にいて。ま、僕はいないんですけど(笑)。みんなはほんとに寒かったし。……あの、僕は寒くなかったんですが(笑)。労働のシーンではほんとに1日中やってるんですよね。だから決してラクな撮影ではなかった。そういう中で、役者さんたちがどんどん役を越えて団結して繋がっていくのをすごく感じました」。そんな現場で監督のSABUさんはみんなから愛されるキャラクターだったとか。「SABUさんがものすごい魅力的な人なんですよ!だからSABUさんがモニターを見てうれしそうにしていると、もうそれだけでうれしくて(笑)。みんなの演技ももっとのっていくっていう。SABUさんは役者さん全員に対してそれぞれ愛情を注いでくれる監督なのでやりがいがあります。“あ、この監督は見てくれているなぁ”って」。