わずか10ヶ月の活動期間を経て、突然姿を消した絵師・写楽。第一級のミステリーとして今も世界中の研究者が行方を追うこの絵師を、エンタメ色豊かに描く『戯伝写楽』。今回、初顔合わせでともに主演を果たす橋本さとしと大和悠河に、作品について、またそれぞれにゆかりのあるスタッフ陣についても話を聞いた。
脚本家も演出家も観察の達人。当て書きだから油断できない
●出演が決まったときのお気持ちは?
橋本 和物でのオリジナルミュージカルということで、まずそのチャレンジ精神が楽しいし、公演に参加できること自体がうれしいと思ったんです。スタッフもキャストもすごい人たちが集まっているから、その舞台に出させていただけるのは本当に光栄ですね。
大和 私も和物がとても好きなんですが、宝塚に在団中はあまり出演する機会がなかったんです。だから久しぶりに江戸時代を演じられると思って、ワクワクしています。
●今回、脚本が中島かずきさん、演出が荻田浩一さんということで、お2人ともそれぞれにとてもなじみのあるスタッフがそろいましたね。
橋本 もう“新感線VS宝塚”ですよ(笑)。でも派手なビジュアルの舞台の中に、しっかりと人間の思惑や個性を描き出す方たちだから、ある意味、共通しているかなと。かずきさんは僕が学生の頃から知ってる人だし、今回も当て書きでどんな役になるんだろう?と興味津々です。とにかく物語上の“ウソ”が上手い方なんで、何が出てくるか油断できないんですよ。
大和 以前から中島さんの世界観に憧れていたので、その中に入れるのがまず楽しみ。荻田先生も宝塚にいらっしゃった頃から役者をすごく観察する方なんですよ。
橋本 なんなんでしょうねー。あの人たちは(笑)。最強の2人じゃないですか。
大和 稽古場で自分の中で消化しきれないままやっていたら、後で荻田先生に言われたことが当たっていたり(笑)。荻田ワールドも大好きなので、今回楽しみが倍なんです。
写楽の深い世界をお客様と共有できる舞台にしたい
●ますます劇中の関係性が気になりますね。
橋本 僕は落ち目の能役者なんですが、おせいちゃんと偶然出会ったことで、あることを企んでいく役です。でも利用するだけじゃなくて、魂の奥底を描ける彼女に惹かれてもいて。あとは……観ていただくとして(笑)。
大和 おせいはただただ絵を描いていたいという人。それが十郎兵衛に出会って段々変わっていくんですね。特に女っぽいっていう感じはしないから、女優を始めたばかりの私としては、やりやすいかな(笑)。
橋本 おせいは芯がとても純粋だよね。そんな彼女を十郎兵衛たち、いろんなもくろみを持った人々が取り囲むという。そこはやっぱり当て書きかも(笑)。
●(笑)。お互いの印象はいかがですか?
橋本 僕は大和さんに初めて会ったとき、すごくテンションが上がりました(笑)。まさにおせいみたいな感じですね。
大和 橋本さんはいらっしゃるだけで大きくて優しいオーラが出てますよね。数ヶ月前まで宝塚市に住んでいたもので、橋本さんの大阪弁にホッとしました。
●では最後に、お客様にメッセージを。
橋本 華やかな部分とドラマの部分の両方が表現される舞台になると思うので、しっかり頑張らないと!と思っています。舞台は一瞬一瞬のものですから、この作品ならではの残像をぜひ持ち帰っていただきたいですね。
大和 写楽の物語と聞いたときに、これは深い世界にのめり込んでしまいそうだぞ、と感じたんですよ。お客様にも同じようにその世界を楽しんでいただけるよう、精一杯努めたいと思います。
インタビュー・文●佐藤さくら 撮影●高岡 弘
元宝塚トップスター・大和さんが橋本さんに宝塚指南!?
以前から劇団☆新感線のファンという大和さんに対し、宝塚歌劇団は未見だという橋本さん。大阪出身で現在はミュージカル界でも活躍中なだけに、周囲から「意外!」という声が飛ぶと、「一度観たらハマってしまいそうなんだもん」と複雑な(?)胸中を告白。もちろん大和さんの名前も知っていたそうで、「ぜひ一度観てみてください」と勧める大和さんに、「男1人で行っても浮かない?」などと質問攻め。その表情はすっかりその気になっているようでした。また「男役から“女”に戻る練習はしてますか?」とベタな質問をする取材班に、「今までオフもパンツスーツでしたからねー。今はとにかく足を開いて座らないようにしてます」と答えてくださった大和さん。日々の試行錯誤も楽しんでいる様子が伝わってきました。話を聞いていた橋本さんは「やっぱり違う性を演じるなんてすごい」と感心しきり。「俺が女性を演じろって言われたら……、できるかな?」と想像が広がる橋本さんなのでした。
橋本さとし(右):ハシモトサトシ
'66年大阪府生まれ。'89年、劇団☆新感線に参加。以降、同劇団の人気役者として活躍する傍ら、ドラマや映画でも独自の存在感を発揮。'97年に退団後は、映像の他にミュージカルにも進出。確かな演技力と豊かな歌声で『ミス・サイゴン』『ベガーズ・オペラ』など大作でメインキャストを務めた。'07年からは『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役に抜擢され、新たなバルジャン像が話題を集めている。
大和悠河(左):ヤマトユウガ
'77年東京都生まれ。'95年、宝塚歌劇団入団。アイドル性豊かな容姿と高い演技力で、新人公演の主役を務めるなど早くから注目を浴びる。'03年に月組から宙組に組替えし、'07年宙組トップスターに就任。従来の型にはまらない男役スターとして『パラダイス・プリンス』『A/L−怪盗ルパンの青春−』、ミュージカル『雨に唄えば』など代表作多数。'09年7月に退団後、本作が女優としては初主演となる。