江戸時代は元禄、主君の無念を晴らそうと、討ち入りを仕掛ける赤穂浪士たち。この誰もが知る“忠臣蔵”をもとにした舞台『冬の絵空』が、この冬、上演される。史実とフィクションを織り交ぜた大胆な物語のなかで、歌舞伎役者の役を演じるのは、俳優としてもミュージシャンとしても人気を集める藤木直人。彼をある策略に巻き込む大商人を、実力と個性が光る生瀬勝久が演じる。これが初舞台となる藤木を、舞台経験の豊富な生瀬が迎えるような雰囲気で、2人は楽しく本作への意気込みを語ってくれた。
勉強になると聞く舞台には興味があったんです
●藤木さんは本作で初舞台を踏まれますが、決まったときはどんな心境でしたか。
藤木 ついに飛び込んでしまうのかと思いましたね。映像のように撮り直しのきかない舞台は大変そうだなと思っていたので、今でも複雑な気持ちです(笑)。
生瀬 でも、「やる」って言ったんでしょう(笑)。それがうれしいですよね。舞台はイヤなのかと思ってたから。
藤木 興味はあったんですよね。やっぱり今って、舞台出身の方が映像にもいっぱい出てるし、映像ばかりやってた人が舞台にも出てるじゃないですか。舞台を経験した人に聞くと、みんな勉強になるとか楽しいとかっておっしゃるし。
生瀬 僕が学生時代に舞台を始めた頃には、考えられなかった状況ですよね。でも、舞台も映像も結局はそんなに変わらないと思うんですよ。もちろん客席の一番後ろまで届く芝居をしなきゃいけないんだけど、じゃ、声のデカい人しか舞台はできないのかって言ったらそうじゃない。要は、自分を見させる空気どれだけ出すかっていうことだから。
藤木 うわっ、そっちのほうが難しいじゃないですか(笑)。
生瀬 うん、難しいけど大丈夫。稽古をやってるうちに分かるよ、絶対。
舞台を好きになる人が1人でも増えればうれしい
●この『冬の絵空』という作品についての印象は?
藤木 単純に、初めての舞台でいきなりハードルが高いなと思ってます。まず時代物ということで、着物の立ち居振る舞いにも慣れてないし。立ち回りも、台本では「カッコよく」って書けば済みますけど(笑)、それを説得力を持ってやるのはすごく大変なことだろうなぁって。
生瀬 でも、逆に、一度にいろんなことができていいんじゃない?立ち回りなんていうのは練習すれば上手くなるんだから、努力のしがいもあるだろうし。
藤木 そうですね。やるべきことがたくさんあると、落ち込む暇もなく、無我夢中でやれるかもしれないですね。
●それぞれの役柄は、どう演じてみたいと考えてますか。
生瀬 この作品は、実は劇団(そとばこまち)時代に上演していて、僕は同じ役を演じたことがあるんです。すっかり忘れてたんですけど(笑)。でもたぶん、若いから許されるような芝居をやってたと思うんですね。だから、大人になって年相応の芝居をしたらどうなるのか、僕自身が楽しみで。また直人くんがやるのがね、カッコイイ役なんですよ。
藤木 ますますハードルを上げるのはやめてください(笑)
生瀬 いやいやホントに。僕の役の悪だくみに踊らされてしまうジレンマだったり、さらにはその先まで暴走してしまう様に、色気があるっていうかね。
藤木 僕にはないものですけど、頑張ってみます(笑)。
●藤木さんの初舞台を観ようと、初めて観劇される方もいるでしょうね。
生瀬 そう。今回はそれが励みになるなと思っていて。僕も生まれて初めて観た舞台で芝居を好きになったんですけど、直人くんをきっかけにして、1人でもまた舞台を好きになってくれる人が増えればね、素敵なことだなと思ってます。
藤木 そんなこと言われたら、責任の重大さをあらためて感じてしまいますけど。でも、舞台ってぜひ一度観てもらいたいものだなとは思うんです。ここが海だと言えば海になったり、想像力がすごく働かされる舞台の世界っていうのは、僕も好きなので。ただ、できれば温かい目で観ていただければありがたいです(笑)。
インタビュー・文●大内弓子 撮影●井上洋平 ヘア&メイク●大渡八千代(藤木)、光野ひとみ(生瀬)
スタイリング●古田ひろひこ(藤木)、中谷東一(生瀬)
「ちょっとお兄ちゃん風を吹かしたい気はします」(生瀬)
ドラマでの共演もあり、以前から親しい間柄だった藤木直人さんと生瀬勝久さん。「そんなに膝を詰めて話したこともないし、僕が舞台をすすめたわけでもないんですけどね」と生瀬さんは苦笑するが、「せっかく直人くんが舞台に出ると決めたんだから、いい現場にしてあげたい。初舞台はやっぱり一番思い出に残るしね。ちょっとお兄ちゃん風を吹かしたい気はします」と頼もしい。それに対して藤木さんも、「すべてを大事に大事に経験していかないといけないですね」と応える。インタビュー中も、生瀬さんの言葉を聞き逃すまいとするような真剣な表情がとても印象的だった藤木さん。「舞台で演じるということがどういうものかまったく分からないから、生瀬さんの話は、勉強になることがいっぱいありました」。その尊敬の眼差しに、「でも、稽古場で、『あんな偉そうなこと言って、大したことないじゃん』って思われるんですよ(笑)」と、ユーモアたっぷりに返す生瀬さんだった。