まるで幸せを絵に描いたように、ごく普通に暮らしていた4人家族を襲った突然の悲劇。
大切な家族を失った痛みを、人はどのように乗り越えていくのか。この物語で、娘を交通事故で亡くし、自責の念に苦しむ父親役を演じたのは、本作が2作目の映画主演作となる竹野内豊。この映画について「今だからこそ、作られるべき作品だと思った」と彼は語る。家族が互いを思いやり、前を向いて生きていこうとする姿は、爽やかな感動の涙を呼ぶ。今の時代だからこそ、大切に受け止めたい思いがある。彼が映画を通して伝える、温かなメッセージを、ぜひ感じ取ってみてほしい。
自分の想いや感情と重なるものがこの作品にはあったんです
●まず、2作目となる映画主演作に本作を選んだ理由を教えてください
そうですね。特別、こういう作品を待っていたとか、そういうことではないんです。タイミングの問題っていうだけで。この作品は、まず、脚本を読んだときに、すごく純粋にエモーショナルな感情を描いているなと思ったんです。何を伝えたいのかが、すごく明確だった。それが、毎日のニュースや新聞で知ることだとか生活の中で自分自身が感じていたこと、時代に対して思っていることと、ピタッとはまるようなものがあったんです。自分の想いや感情と重なっている作品だと、素直に思えた。それがあったから、その想いに後押しされるように、この映画にスッと取り組むことができたんだと思います。
子どもたちと触れ合って作り上げていった
●竹野内さんが演じた父親・雅仁は、セリフも少なく、深い悲しみを自分の中に押し殺しているような、非常に複雑な役柄です。役づくりのうえで、苦労されたのではと感じました。
人の感情の本当の部分を出したいということを思っていたので、冨樫 森監督とは、いろいろ話をしました。シーンによっては何パターンも演じてみて、試すこともありました。監督は、自分が撮りたいビジョンを明確に持っているんです。決して口数が多い監督ではないんですけど、すごく熱い人で(笑)。カメラの横で、こちらの演技を見ている目がもう、すごいんです。その圧力が。だからこっちも、演技をする時は本当に集中していました。終わったあとに、ハーッと思わず深呼吸したくなるような感じ。撮影中は、息をすることも忘れるくらいの、本当に凝縮されたいい緊張感がありました。
●亮平くん、里琴ちゃんとの共演はいかがでした?劇中、子どもたちと一緒になって楽しそうにはしゃぐ竹野内さんの姿は、ちょっと新鮮でした。
まず、自分には子どもがいないので、最初はどう接するといいのかな? と考える部分もありました。だけど、最初に(娘・絵里奈役の吉田)里琴ちゃんが、僕の胸の中に飛び込んできてくれたんですよ。で、抱っこした瞬間にこれはヤバいな?と(笑)。すごいかわいいなって思えた。愛情が染み込んでくるような、その時の感覚を大事に胸にしまっておこうと思いました。だから、考えるよりも、子どもたちと一緒にゲームしたり、遊んだり、そういう触れ合うことで作っていったものが多いです。子どもたちから学ぶことはとても大きかったですね。
●この映画は、じんわりと胸に響くような感動を観客に与える作品だと思います。この映画を通して、どのようなメッセージを伝えたいですか?
たとえば、自分と同世代の40代を目前にした人たちとかって、仕事ももちろん大事だけれど、仲間とか家族とか、もっと本当の意味で大切にしなくちゃいけないものがあるんじゃないのか?
って気付き始める時期なんだと思うんです。そういう時に、何か感じるものがある作品だと思っています。自分の中で、大切なものは、なんなのか。世の中で、いったい何が一番大切なのか。そういうことを、考えるきっかけになったり、その想いに気付くヒントになるような、温かさがある映画だと思うんです。たくさんの人の、記憶の中に残り続けるような作品になればいいなと思っています。
インタビュー・文●梅原加奈 撮影●柴田ひろあき スタイリング●衣川しづ子 ヘアメイク●奥平正芳
「父親は何でもできなきゃいけないものだってずっと思ってました」
丁寧に言葉を選びながら真摯な受け答えをしてくれた竹野内豊さん。映画の中では、おどけたダンスを披露したり、子どもたちとはしゃいだり、素敵なパパぶりを披露。そんな竹野内さんのお父さん像は、実際の竹野内さんのお父さんのイメージからきているのでは?
と伺ってみたところ。
「いや、うちの親父はもっと厳しかったかも。会話もほとんどないような、父親とはこうあるべきみたいなものを持っているタイプで。だから、父親は何でもできなきゃいけないものだってずっと思ってました」。
では、実際に演じてみて父親という存在のイメージは変わった?
「そうですね。子育てをしながら親が成長していくことは、たくさんあるんだなって。それを改めて知りました」。