第二次戦争直後の1945年。日本の闇市で2人の男が語り合う。昨日起きた、ある殺人事件についてだ。殺された男とその美しい若妻にまつわる目撃証言は多かったにも関わらず、犯人はいっこうに明らかにならない。証言者の言葉はどれが真実なのか、そして残された若妻が語った内容とは?
人々の想い出と欲望のはざまで、真実は二転三転していき…。ジャズ・トランペットの響きに乗せて展開する本作について、これが初舞台となる中村に聞いた。
●最初に出演が決まった時の感想は?
私は元々文学のテイストのある世界が好きなので、初舞台がこの作品で嬉しいです。前から日本文学の名作がもっと戯曲化されて、たくさんの人に観てもらえるといいのにとも思っていたので、その意味でもやりがいがありますね。
●台本は、時代背景が大戦直後に翻案されていますが、そこはどう感じましたか?
戦争を扱った作品はいろいろありますけど、こういうアプローチはなかったんじゃないかと思います。いろんな人種の登場人物がいるんですけど、日本人もアメリカ人も朝鮮人も等しく存在しているから、その視線にすごく共感したし。それはやっぱり、演出家がアメリカ人のアッカーマンさんだからかなと思います。
●その中で、キーとなる若妻を演じるわけですが。
本人の言葉と周りの証言とを合わせると、本当に多重人格みたいですよね。でもそう見えてしまうくらいの狂気が、彼女にはあるんじゃないかと。そして台本を何回も読んでいるうちに、1人の人間にも当たり前のようにいろんな面があるし、置かれた状況によってもさまざまに態度が変わっていくんだということが分かってきて。そう考えたら、初めから最後まで彼女の態度はつながってるんだと分かったので、今は、それぞれの場面が表したいことは何なのかということを一番に考えたいと思ってます。
●ちなみに、この役は自分自身と重なる部分はありますか?
うーん。でも女性って絶対、究極にいくと男の人よりたくましいですよね!(笑) 私が今回、舞台で自分をさらけ出すのが楽しみなのも、そういう部分かもしれないですし。あとはオーディションの時に、「もっと狂気、狂気!」ってアッカーマンさんに言われて、その言葉に思わず乗っていってしまったら、演技が終わった後に「君が一番怖かった」って言われました(笑)。
●その、“さらけ出さなきゃいけない”舞台に出演を決めた理由というのは。
もっと自分に馬力をつけたいと思ったんです。それにはやっぱり舞台だなと思ったし、稽古場で自分の駄目なところをハッキリさせないと、今のままでは成長しないとも感じました。
●では中村さんが思う、この作品の魅力とは?
どこか“えぐられる”感覚かな。そういうところに自分は惹かれるし、お客様にもそこを楽しんでいただければと思います。
インタビュー・文●佐藤さくら