鮮烈でロマンティックな音楽、切れ味の良いダンスシーン、そしてスリリングなストーリー展開。
初演当時、ミュージカル界に衝撃を与えた「ウエスト・サイド物語」の映画化50周年を記念するシネマティック・フルオーケストラ・コンサートが、世界各地での公演を経て、日本にこの秋上陸する。
リマスターされたオリジナルの映像と歌声に、大編成のオーケストラが迫力の音楽をつける。
指揮は、作曲を手がけた指揮者レナード・バーンスタインの最後の弟子で、その熱い音楽表現が絶大な人気を集める佐渡 裕だ。
佐渡 「師匠の代表作を記念の公演で指揮できる。こんなに光栄なことはありません。
今でもこの作品を演奏するときには、バーンスタインの姿が乗り移るような感覚があります」
シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を現代に置き換えた愛の悲劇は、今も色褪せることなく心に響く。
佐渡 「対立の壁を超えて、人が人を好きになる。しかし同時に、抑えることができない憎しみは社会のどこかに存在する。
解決することのない普遍的なテーマが描かれていることが、多くの人からこのミュージカルが愛され続ける理由でしょう」
甘く切ない「トゥナイト」や「マリア」から、大盛り上がり必至の「マンボ」まで!
記憶に残るメロディが、形を変えながら、ほとばしる若さと危険なエネルギーを匂わせる。
佐渡 「トニーとマリアが初めて向き合って踊るシーンの音楽もすごく気に入っています。
ふたりがまさに恋に落ちる瞬間の、ドキドキ感と恥じらい。それをあのような音楽で表現するバーンスタインは、素晴らしいセンスの持ち主だとつくづく感じます」
情感豊かではつらつとした作品のタクトを振らせれば右に出るものはいない佐渡が、東京フィルハーモニー交響楽団と最高にエキサイティングな物語を綴る。
佐渡 「観る者を異空間に連れて行く、これはまさに優れたエンタテインメントです。
今回は、オーケストラが舞台下のピットではなくステージ上で演奏をするスタイルなので、通常の演奏会のような気持ちで存分に“暴れる”ことができそうです(笑)。
僕自身、初めて「ウエスト・サイド物語」を観たときの印象を今でも覚えています。こんなにすごいものが世の中にあるのかと思いましたね。
当時の感動を懐かしんで来られる方々の期待に、まず絶対に応えたい。
そしてミュージカルファンの方々に、オーケストラによる生演奏の立体感と醍醐味をぜひ味わっていただきたいです」
名匠レナード・バーンスタインの不朽の名作から佐渡が感じ取ったメッセージを、最後にご紹介しよう。
佐渡 「トニーが息絶えるラストでは、平和を祈るような音と、不安を表現するような音が重なり合い、解決しない音楽とともに物語が終結します。
社会が抱える永遠の問題を思いながらも、答えは見つからないまま終わってしまうかのようです。
しかし、だからこそ我々は平和を目指し続けなくてはならない。そんなメッセージを感じます」
インタビュー・文/高坂はる香 Photo/Irwin Wong
佐渡 裕:サド ユタカ
小澤征爾や故レナード・バーンスタインに師事。'89年ブザンソン国際指揮者コ
ンクール優勝。'11年ベルリン・フィ
ルハーモニー管弦楽団定期演奏会デビュー。国内外での指揮活動のほか、兵庫県立芸術文化センター芸術監督や「題名のない音楽会」(テレビ朝日系)の司会者を務める。