クラシック
【インタビュー】戸澤采紀 (ヴァイオリン)

【インタビュー】戸澤采紀 (ヴァイオリン)

新進気鋭のヴァイオリニスト 戸澤采紀 (とざわ さき)さんが語る、
ヴァイオリンとの出会い~リサイタルに寄せる想い、そしてこれからのこと

 

2015年に「第69回全日本学生音楽コンクール」中学校の部・全国大会で優勝、翌年には「第85回日本音楽コンクール」で最年少(15歳)優勝を飾り、日本最高峰のコンクールを次々と制覇。さらには、スイス・シオンで開催された「2017 ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクール」では第2位(1位なし最高位)に入賞、併せてユース審査員賞を受賞するなど、今最も輝いている新進気鋭のヴァイオリニスト戸澤采紀さん。
8月に岡山、9月に東京での本格的なリサイタルデビューが決まり、公演に寄せてお話を伺った。


戸澤采紀


-- ご両親ともにヴァイオリニストというご家庭に生まれ、6歳からお母様のもとでヴァイオリンを始めたそうですね。どういうきっかけだったのでしょうか?

 

戸澤 両親がヴァイオリンを弾いていたのもあって、4歳半くらいでヴァイオリンをやりたいと思ったんです。母は怖いから父に習いたいと言ったのですが、父の方が100倍怖くて…(笑)だから始めてもいないのに諦めて、まずはピアノを始めたんです。
でもその後、両親が共演したオーケストラの生演奏を聴いて、「ピアノだとこの中には入れないんだ…私もあの中に入りたい!」と思ったのがきっかけですね。

 

-- お父様と同じ先生(保井頌子氏)につかれたのですね?

 

戸澤 そうなんです。父も子どもの頃、そしてその娘の私が親子2代で教えていただいています。今も時々見ていただいていて、発表会にも出演させていただいたりしています。

 

-- これまでヴァイオリンを続けていて、辛いことやスランプなどはなかったですか?

 

戸澤 あまり辞めたいとかは思ったことはなくて。ただ、成長のスピードが変わったなとここ数年は感じています。
小さい時は技術的な成長が多いから自分で分かり易く成長を感じられたけど、高校生になってからは音楽性や内面的な成長が求められるので、気持ち的なスランプを感じることはありますね。今も模索中です。

 

-- これまで数々のコンクールで第1位を獲得していますが、1位にこだわって突き詰めたのか、最高のパフォーマンスの結果として1位が付いてきたのか…どういった意識で臨まれてきたのでしょうか?

 

戸澤 全日本学生音楽コンクール(以下、学生音コン)は4回受けていて最後の最後だったので、殺気立って1位を獲りにいったコンクールでしたね。
日本音楽コンクール(以下、日本音コン)はまさか1位を獲れると思ってはいなかったです。日本音コンと翌年のティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクールは、自分の勉強のために、そしてその時の自分にできるベストの演奏ができたらと思って臨んだら、結果が付いてきた感じですね。

 

-- 日本音コンの予選は長く辛いと有名ですね。

 

戸澤 予選のとき精神的に本当に辛くて…。2次予選の曲が苦手で布団に入って泣きまくっていました。日本で1番権威のあるコンクールだからプレッシャーがすごくて。覚悟を持ってステージに上がるというのができなかったんです。

 

-- ちなみに2次予選は何を弾いたのですか?

 

戸澤 バッハ「パルティ―タ第3番」全曲と、シマノフスキ「神話」の第1曲・第3曲でした。

 

-- 今回のリサイタルプログラムについてお伺いします。
このプログラム構成は珍しいですよね、とてもセンスを感じます!前半と後半の分け方が少し特徴的というか。

 

今回のリサイタルプログラム
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第18番 ト長調 K.301
ミルシテイン:パガニーニアーナ (無伴奏)
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ト長調 Op.27 No.5
~ 休 憩 ~
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第8番 ト長調 Op.30,No3
プーランク:ヴァイオリンソナタ FP 119

 

戸澤 最初お話いただいた時に無伴奏は無伴奏で固めてはと仰っていただいたのですが、自分の演奏の良いところ(自然に変化を付けられるところ)を生かして対比させたいなと。せっかく本格的なホールで弾けるチャンスので、ガラッと会場の雰囲気を変えるというのをやってみたくて。

 

-- モーツァルトの定番曲で聴衆を惹きつけた後、次の「パガニーニアーナ」なのですが、数あるパガニーニ主題の作品で、なぜミルシテインを選んだのでしょうか?

 

戸澤 ヴァイオリニストとしての個性が出せる曲かなと。この曲は楽譜にアーティキレーション(強弱法、スラー、スタッカート、レガートなどの記号)が書かれていなくて、演奏者に全て任せられているんです。
モーツァルトとは全然違うので、ガラッと雰囲気を変えて演奏会の流れを勢いづけられるのかなと思っています。

 

-- さらに次もまた無伴奏が続くんですよね、驚かされます(笑)個人的にイザイの第5番が好きなので楽しみにしています。

 

戸澤 私も一番好きなんです!

 

-- 惹きつけられるものがありますよね。

 

戸澤 なかなか日本人は弾かないですし、イザイの他の無伴奏に比べると派手さが劣るのですが、最初の曲「夜明け」の情景描写がものすごく美しくて、さらに2曲目は民族的なダンスという盛りだくさんな内容で魅力的です。でもまとめるのが本当に大変です。

 

-- 出だしのメロディを聴かせるのも緊張しますよね。

 

戸澤 右手がプルプルします(笑)
歌うように聴かせるという、それを自然にやるのがこの曲の醍醐味かなと思っています。

 

-- 最後のプーランクも珍しい選曲ですね。

 

戸澤 日本音コンの3次予選の課題だった曲で、確かに演奏会のメインの曲にするは人は少ないですね。
この曲は、戦争での親友の死を題材(ナチスの弾圧により銃殺されたスペインの作家、フェデリーコ・ガルシア・ロルカに献呈されている)にしていて、フランスの曲としては音楽的に独特な和声使いで、音の重みや力が他の曲にはなくてすごく好きなんです。
日本音コンで聴いてくださっていた人もいるので、その時よりも細かい部分での繊細な変化や成長できたところを見せられたらいいなと思っています。

 

-- 確かに大きいコンクールを乗り越えると、曲の完成度は増しますよね。

 

戸澤 すごく練習しますからね。しばらくもういいかなって思う曲もあるけど、プーランクのこの曲はもう1回やりたいなぁって。日本音コンの時に2箇所失敗しちゃったので、リベンジもしたいなと思っています(笑)

 

-- ピアニストの丸山晟民(まるやま あきひと)さんとは何度か共演しているのですか?

 

戸澤 1度だけコンチェルトの伴奏を頼んだことがあります。小さい音を出す時に音の密度が大きくならず繊細で、和音の積み上げ方も上手く、頭の良い音楽をする方です。ベートーヴェンとか洗練された感じに聴かせられると思います。

戸澤采紀


-- これからのことについてお聞かせください。
学生音コンや日本音コンといった国内の権威あるコンクールを制覇されていますが、今後は海外のコンクールを積極的に受けていくのですか?

 

戸澤 20歳くらいでコンクールは卒業できればいいなと思っています。将来はベルリン・フィルに入りたいっていう夢を持っているので、そのためにソロ以外の勉強をしたいんです。ベルリン・フィルはアカデミーなど充実しているので、そこで研鑽を積みたいんです。

 

-- ベルリン・フィルに入りたいという強い希望をお持ちなんですね。戸澤さんにとってベルリン・フィルとはやはり特別なものですか?

 

戸澤 実際に聴いた時、オーケストラが鳴っているというより、ホールが鳴っているって感じたんです。録音でもそう感じます。演奏家たちの音楽への食らいつきがものすごくて、いろんな時代のいろんな作曲家、指揮者・ソリストなどに応じてガラッと音楽を変えられる応用力や、新しいものを吸収する力、やっぱりベルリン・フィルはどんどん進化していくイメージですね。そういう意味で時代の最先端なんです。そして、その中に入りたいと思うんです。

 

-- コンサートマスターではなくtuttiですか?

 

戸澤 なんでだろう…。

 

-- お父様は東京シティフィルのコンサートマスターですが…?

 

戸澤 父のせいかもしれないですね(笑)
今学校のオケの他に2つオーケストラに入っていて、コンマスをやってみたいなと思うこともあるのですが…。
実際入ってみれば変わるのかもしれないけれど、やはりベルリン・フィルではその大きな波にのまれていたいんです(笑)

 

-- ピアニストなど共演してみたい人はいますか?

 

戸澤 クラウディオ・アバドさんの大ファンなので、生きていたら共演したかったですね。
ピアニストでは、イタリアのエンディコパーチェットさんやフランスのエリック・ル・サージュさんですね。

 

-- 今後チャレンジしたい作曲家やジャンルなどはありますか?

 

戸澤 ショスタコーヴィチやプロコフィエフ、シェーンベルク、バルトークなどは、まだやったことがないのでチャレンジしたいです。苦手意識もあるので。

 

-- 最後になりますが、戸澤さんのような若い人たちにクラシック音楽を聴いてもらうために、何かご自身でも取り組んでいきたいことなどはありますか?

 

戸澤 今の日本では、テレビとかにクラシックの演奏家が出演することについて、あまり良くない意味での偏見があると思うんです。それを言ったらおしまいだし、いいことではないので…メディアを使うことに偏見がなくなる事が一番なんだけど…。
(お母様:内輪でやっていてもしょうがないですよね…)
自分を発信するということに負い目を感じずに、勇気を出して発信していきたいです。そんなに得意じゃないですけど…これだけメディアが発達しているから必要になってくると思います。

 

-- テレビで戸澤さんを観る日が来るのを楽しみにしていますね!

 

戸澤 ありがとうございます!

戸澤采紀

「卓球をしに学校に行っているのでは…」とお母様が仰るほど卓球にハマっていて、毎日昼休みにずっと卓球をしているという、とってもチャーミングな戸澤さん。
高校生とは思えないほどに丁寧でしっかりとした受け答えから、抜群のテクニックと安定した音楽性の理由が垣間見えたインタビューとなった。これからの活躍に乞うご期待!

 

 

取材・文・写真/ローソンチケット

 


 

 公演スケジュール

 

戸澤采紀 ヴァイオリン・リサイタル2018

2018/8/10(金) 早島町町民総合会館 ゆるびの舎(岡山県)
2018/9/21(金) 浜離宮朝日ホール(東京都)

 

 公演内容

 

【プログラム】
モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ 第18番 ト長調 K.301
ミルシテイン/パガニーニアーナ (無伴奏)
イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ト長調 Op.27 No.5
~ 休 憩 ~
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ 第8番 ト長調 Op.30,No3
プーランク/ヴァイオリンソナタ FP 119

【出演者】
ヴァイオリン:戸澤采紀 (とざわ さき)
ピアノ:丸山晟民 (まるやま あきひと)

 

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